論語、素読会

仁は則ち吾知らざるなり|「論語」憲問第十四02

勝ち気を起こす心、自慢する心、憎む心、欲しがる心を行わないように抑制する、このような人は仁者でしょうか。孔先生がおっしゃった、それを行うのは難しい。仁者であるかは私は分からない。|「論語」憲問第十四02

【現代に活かす論語】
利己的な心を抑制することは難しい。また、それができたからといって、思いやりがあるとはいい難い。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

10:55「憲問第十四」前半01 – 21 素読
2023.11.22収録

【解釈】

克・伐・怨・欲行われざる、以て仁と為すべきや。子曰わく、以て難しと為すべし。仁は則ち吾知らざるなり。|「論語」憲問第十四02
克伐怨欲不行焉、可以為仁矣。子曰、可以為難矣。仁則吾不知也。

「克」(こく)は勝ち気を起こす、人をしのぐ。「伐」(ばつ)は自慢する、ひけらかす。「怨」(えん)は憎む、仇として怒る。「欲」(よく)はほしがる、手に入れたいと思う。「仁」(じん)はここでは仁者のこと。孔子の門人にとっては目指す目標。思いやりのある人物。『仁』とは?|論語、素読会

勝ち気を起こす心、自慢する心、憎む心、欲しがる心を行わないように抑制する、このような人は仁者でしょうか。孔先生がおっしゃった、それを行うのは難しい。仁者であるかは私は分からない。

【解説①】

「仁」は仁者を指します。誰かが孔子に尋ねたのでしょう、仁者について尋ねているので弟子かも知れませんが、この章句の目的は、利己的な心を自制することは難しく、それを行ったとしても仁者であると言えないという孔子の考えを引き出していることにあります。さらには、質問にある条件が、仁者かどうかという論点からはズレていることを示唆しています。孔子はあくまでも「仁」の中に居ることを求めていますので、心を抑えることを求めていません。はなはだ見当違いの質問に、その実現が難しいね。とし、仁者であるかどうかは分からないと、実直に応えているが清々しいです。

【解説②】

孔子は「仁者」であるか尋ねられると、決まって仁者かどうかは分からないといいます。話題に上った人間の人物評を敢えて避けているというより、「仁者」、「仁」がどういうものであることか言及してそれが少ない言葉で固定化することを避けているように思います。「仁」を思いやりの心と定義していますが、どんな心が思いやりなのか、どんな人物が「仁者」で思いやりの心が有るのか無いのか、孔子の言葉によって読み手がそれぞれ感じ取っていくのが論語の魅力だと思います。

或ひと曰わく、雍や仁にして佞ならず。子曰わく、焉んぞ佞を用いん。人に禦るに口給を以てすれば、屢人に憎まる。其の仁を知らず、焉んぞ佞を用いん。|「論語」公冶長第五05
孟武伯問う、子路仁なりや。子曰わく、知らざるなり。又問う。子曰わく、由や、千乘之国、其の賦を治めしむべきなり。其の仁を知らざるなり。求や何如。子曰わく、求や、千室の邑、百乘の家、之が宰たらしむべきなり。其の仁を知らざるなり。赤や何如。子曰わく、赤や束帯して朝に立ち、賓客と言わしむべきなり。其の仁を知らざるなり。|「論語」公冶長第五08
子張問うて曰わく、令尹子文、三たび仕えて令尹と為れども、喜ぶ色無し。三たび之を已めらるれども、慍む色無し。舊令尹の政、必ず以て新令尹に告ぐ。何如。子曰わく、忠なり。曰わく、仁なりや。曰わく、未だ知らず、焉んぞ仁なるを得ん。崔子斉の君を弑す。陳文子馬十乘有り、棄てて之を違る。他邦に至りて、則ち曰わく、猶吾が大夫崔子がごときなりと。之を違る。一邦に至りて、則ち又曰わく、猶吾が大夫崔子がごときなりと。之を違る。何如。子曰わく、清なり。曰わく、仁なりや。曰わく、未だ知らず、焉んぞ仁なるを得ん。|「論語」公冶長第五19
子貢曰わく、如し博く民に施して、能く衆を済う有らば、何如。仁と謂うべきか。子曰わく、何ぞ仁を事とせん。必ずや聖か。堯舜も其れ猶諸を病めり。夫れ仁者は、己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す。能く近く譬を取る。仁の方と謂うべきのみ。|「論語」雍也第六28
克・伐・怨・欲行われざる、以て仁と為すべきや。子曰わく、以て難しと為すべし。仁は則ち吾知らざるなり。|「論語」憲問第十四02


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四01< | >憲問第十四03


【原文・白文】
 克伐怨欲不行焉、可以為仁矣。子曰、可以為難矣。仁則吾不知也。
<克伐怨欲不行焉、可以爲仁矣。子曰、可以爲難矣。仁則吾不知也。>

(克・伐・怨・欲行われざる、以て仁と為すべきや。子曰わく、以て難しと為すべし。仁は則ち吾知らざるなり。)
【読み下し文】
 克(こく)・伐(ばつ)・怨(えん)・欲(よく)行(おこな)われざる、以(もっ)て仁(じん)と為(な)すべきや。子(し)曰(のたま)わく、以(もっ)て難(かた)しと為(な)すべし。仁(じん)は則(すなわ)ち吾(われ)知(し)らざるなり。)


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憲問第十四01< | >憲問第十四03


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