論語、素読会

抑亦先ず覚る者は、是れ賢か|「論語」憲問第十四33

孔先生がおっしゃった、自分がだまされるのではないかと推し量ることをせず、信頼されていないかと推測することもしない。そもそも(人に対してそのようなことを)さきにはっきりとわかる人は、才能と徳をもった賢者といっていいだろう。|「論語」憲問第十四33

【現代に活かす論語】 ☆☆☆☆★ 星4
騙されるかも知れない、信頼されていないかも知れない、いろいろ心巡らして日々逡巡することなく、そもそもはっきり分かることができれば、それは賢いといっていいだろう。

相手が騙そうとしているのか、相手に信頼されているのか、そもそもはっきり分かるほど賢ければ、日々いろいろ悩むことはない。でも、悩んでしまうのだ。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

08:05「憲問第十四」後半22 – 46 素読
2024.1.22収録

【解釈】

子曰わく、詐を逆えず、信ぜられざるを億らず。抑亦先ず覚る者は、是れ賢か。|「論語」憲問第十四33
子曰、不逆詐、不億不信。抑亦先覚者、是賢乎。

「詐」(いつわり)は詐欺、だますこと、あざむき。「逆」(むかえる)は推し量る。「億」(おもんぱかる)は推測する、はかる。「抑」(そもそも)は軽い逆接を表す。「亦」(また)は文のリズムを整えることば。「覚」(さとる)ははっきりとわかる。「賢」(けん)は才能と徳をもった人。「先」(まず)はさきに。

孔先生がおっしゃった、自分がだまされるのではないかと推し量ることをせず、信頼されていないかと推測することもしない。そもそも(人に対してそのようなことを)さきにはっきりとわかる人は、才能と徳をもった賢者といっていいだろう。

【解説】

疑心暗鬼になってあれこれ思い悩むより、自然とひとを判断できるような賢者になりたい。この章句は孔子の願いではないでしょうか。というのは、孔子は次の章句で頑なで独りよがりになりたくないと言っているからです。この章句と次の章句を併せて解釈をすることで、この章句が相手の気持ちを覚ろうとあれこれ気を回す孔子自身を鑑み、自然にある意味直感的に相手を見抜く眼力が備わっていればという孔子の希望を表しているように感じます。孔子は自分を賢者である、君子であるなどと考えることがない人物です。その孔子のある種憧れを提示し、その次の章句で実際に孔子の言動を提示することで、読む者に考えさせる形式を取っているように感じます。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四32< | >憲問第十四34


【原文・白文】
 子曰、不逆詐、不億不信。抑亦先覚者、是賢乎。
<子曰、不逆詐、不億不信。抑亦先覺者、是賢乎。>

(子曰わく、詐を逆えず、信ぜられざるを億らず。抑亦先ず覚る者は、是れ賢か。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、詐(いつわり)を逆(むか)えず、信(しん)ぜられざるを億(おもんぱか)らず。抑(そもそも)亦(また)先(ま)ず覚(さと)る者(もの)は、是(こ)れ賢(けん)か。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四32< | >憲問第十四34


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