論語、素読会

君子の道なる者三つ、我能くすること無し|「論語」憲問第十四30

孔先生がおっしゃった、人に上に立つりっぱな人(君子)が徳を重ねながら進むべき道として行うことは三つあるが、私はまだできていない。(三つとは)思いやりの心を持ち、情愛に溢れる仁者は思いなやまない、生きるための知恵・道理に通じた智者は迷わない、勇気ある者は恐れない。(これを聞いた)子貢が言った、それは先生が自分からおっしゃったことです。(おそらく謙遜でしょう)|「論語」憲問第十四30

【現代に活かす論語】
人の上に立つ立派なリーダーは、思いやりがあるが故に悩まず、知識に通じているが故に迷わず、勇気があるが故に恐れません。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

07:35「憲問第十四」後半22 – 46 素読
2024.1.22収録

【解釈】

子貢(しこう) … 姓は端木(たんぼく)、名は賜(し)、字は子貢(しこう)。孔子より三十一歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会

子曰わく、君子の道なる者三つ、我能くすること無し。仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼れず。子貢曰わく、夫子自ら道うなり。|「論語」憲問第十四30
子曰、君子道者三、我無能焉。仁者不憂、知者不惑、勇者不懼。子貢曰、夫子自道也。

「君子」(くんし)は人の上に立つ立派な人。「道」は人が生まれながらにして徳性を重ねながら進む道。『道』とは?|論語、素読会 「者」(もの)はもの、こと。「能」(よく)はできる、能力がある、任に堪える。「仁者」(じんしゃ)は思いやりの心を持ち、情愛に溢れるひと。『仁』とは?|論語、素読会 「憂」(うれう)は心配する、思いなやむ。「知者」(ちしゃ)は生きるための知恵・道理に通じたひと。『知』とは?|論語、素読会 「懼」(おそれる)は恐れおののく。「夫子」(ふうし)は孔子のこと。「道」(いう)は説く、語る。

孔先生がおっしゃった、人に上に立つりっぱな人(君子)が徳を重ねながら進むべき道として行うことは三つあるが、私はまだできていない。(三つとは)思いやりの心を持ち、情愛に溢れる仁者は思いなやまない、生きるための知恵・道理に通じた智者は迷わない、勇気ある者は恐れない。(これを聞いた)子貢が言った、それは先生が自分からおっしゃったことです。(おそらく謙遜でしょう)

【解説】

君子論、政治に携わる者の有り様を表した章句が多いこの篇において、孔子がまだできていないと語る、君子の「道」が三つあるというところに先ず惹かれます。論語をここまで読み進めてきた者にとっては馴染みがある表現ですが、私はまだできていないと最初に言うと読む者の耳目を集めます。そして孔子の門弟の中でも特に優秀であった子貢のことばで「孔先生の謙遜ですが」と言えば、さらに心に染み渡ることでしょう。ここに私は編者の工夫を感じます。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四29< | >憲問第十四31


【原文・白文】
 子曰、君子道者三、我無能焉。仁者不憂、知者不惑、勇者不懼。子貢曰、夫子自道也。

(子曰わく、君子の道なる者三つ、我能くすること無し。仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼れず。子貢曰わく、夫子自ら道うなり。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、君子(くんし)の道(みち)なる者(もの)三(みっ)つ、我(われ)能(よ)くすること無(な)し。仁者(じんしゃ)は憂(うれ)えず、知者(ちしゃ)は惑(まど)わず、勇者(ゆうしゃ)は懼(おそ)れず。子貢(しこう)曰(い)わく、夫子(ふうし)自(みずか)ら道(い)うなり。


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憲問第十四29< | >憲問第十四31


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