論語、素読会

貧しくして怨む無きは難く|「論語」憲問第十四11

孔先生がおっしゃった、貧しくても恨みがましくないのは難しく、裕福でもわがままにふるまわないのは、たやすいことだ。|「論語」憲問第十四11

【現代に活かす論語】
貧しくても恨みがましくないのは難しい。裕福でもわがままにふるまわないのは容易いことだ。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

06:45「憲問第十四」前半01 – 21 素読
2023.11.29収録

【解釈】

子曰わく、貧しくして怨む無きは難く、富みて驕る無きは易し。|「論語」憲問第十四11
子曰、貧而無怨難、富而無驕易。

「驕」(おごる)はわがままにふるまう。

孔先生がおっしゃった、貧しくても恨みがましくないのは難しく、裕福でもわがままにふるまわないのは、たやすいことだ。

【解説】

他の章句で孔子は、貧しくても徳を重ねることを楽しみ、裕福になっても礼節を大事にする人には敵わないといいます。「子貢曰わく、貧しくして諂うこと無く、富みて驕ること無きは何如。子曰わく、可なり。未だ貧しくして道を楽しみ、富みて礼を好む者には若かざるなり。|「論語」学而第一15」貧しいことを楽しむというのは、更に難しいと思いますが、本章句から孔子の考えはストレートに伝わります。

更に、本章句をひとつ前の章句からの流れで解釈してみましょう。「管仲を問う。曰わく、この人や、伯氏の騈邑三百を奪い。疏食を飯いて、歯を没するまで怨言無し。|「論語」憲問第十四10」管仲が下した処罰を受けた伯氏は、貧乏を強いられたのにもかかわらず、生涯に渡って恨み言を言うことは無かったと言います。本章句が管仲の政治手腕を評価して、貧しくても恨みがましくないのは難しいと述べていると解釈した場合、裕福でもわがままにふるまわないのはたやすいという本章句の後半も同様に、管仲に対する評価だとして解釈を続けます。こちらの章句では、管仲は器が小さく、礼節を知らないと評されています。「子曰わく、管仲の器は小なるかな。或ひと曰わく、<中略>管氏にして礼を知らば、孰か礼を知らざらん。|「論語」八佾第三22」裕福な管仲がわがままにふるまわないのはたやすい。と解釈すれば、政治手腕の評価が高くとも、徳性が充分ではないことを皮肉っているとも取れます。文献によればこの章句と前の章句をひとつとする考えもありますが、無理に一緒にして解釈するより、分けて読み手が思うように解釈するのもいいかと思います。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四10< | >憲問第十四12


【原文・白文】
 子曰、貧而無怨難、富而無驕易。

(子曰わく、貧しくして怨む無きは難く、富みて驕る無きは易し。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、貧(まず)しくして怨(うら)む無(な)きは難(かた)く、富(と)みて驕(おご)る無(な)きは易(やす)し。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四10< | >憲問第十四12


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