論語、素読会

子衛の霊公の無道なるを言う|「論語」憲問第十四20

孔先生衛の霊公の道に外れた行いについて話された。季康子が言うには、それが話す通りだとすると、どうして滅亡しないのでしょうねと。孔先生がおっしゃった、衛の国の大夫の仲叔圉は外交を治め、祝鮀は祭祀を治め、王孫賈は国防を治めた。もしその通りであれば、どうして滅びるでしょうかと。|「論語」憲問第十四20

【現代に活かす論語】
優秀な人材の登用と権限委譲は、その上司の能力の不足を補って余りある。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

09:20「憲問第十四」前半01 – 21 素読
2023.12.14収録

【解釈】

霊公(れいこう) … 衛(えい)の公。襄公(じょうこう)の庶子。夫人の南子に溺れて政治を顧みず、その死後は内乱が起こった。「論語」の登場人物|論語、素読会

康子(こうし) … 季康子(きこうし)。魯の大夫。季氏(季孫氏)の七代目。名は肥(ひ)、贈り名は康(こう)。孔子の門人、冉求、子貢、子路、樊遅らを任用し、冉求の求めで孔子を招いたりもした。「論語」の登場人物|論語、素読会

仲叔(ちゅうしゅくぎょ) … 姓は孔、名は(ぎょ)、贈り名は文。衛の国の大夫。贈り名として「文」は最上の文字。「論語」の登場人物|論語、素読会

祝鮀(しゅくだ) … 名は鮀。祝は宗廟の祭官の職。字は子魚。衛の大夫。口才があった。「論語」の登場人物|論語、素読会

王孫賈(おうそんか) … 衛(えい)の国の大夫。霊公(れいこう)に仕えて軍を統率した名臣。「論語」の登場人物|論語、素読会

子衛の霊公の無道なるを言う。康子曰わく、夫れ是くの如くんば、奚にしてか喪びざる。孔子曰わく、仲叔圉は賓客を治め、祝鮀は宗廟を治め、王孫賈は軍旅を治む。夫れ是くの如くんば、奚ぞ其れ喪びん。|「論語」憲問第十四20
子言衛霊公之無道也。康子曰、夫如是、奚而不喪。孔子曰、仲叔圉治賓客、祝鮀治宗廟、王孫賈治軍旅。夫如是、奚其喪。

「無道」(むどう)は道に外れた行いをする人。「言」(いう)は告げる、知らせる、議論する。「奚」(いかに)はなぜ、どうして。「喪」(ほろぼす)は滅亡する。「賓客」(ひんきゃく)は春秋・戦国時代、他国から派遣された使者。「軍旅」(ぐんりょ)は作戦、戦争。

孔先生衛の霊公の道に外れた行いについて話された。季康子が言うには、それが話す通りだとすると、どうして滅亡しないのでしょうねと。孔先生がおっしゃった、衛の国の大夫の仲叔圉は外交を治め、祝鮀は祭祀を治め、王孫賈は国防を治めた。もしその通りであれば、どうして滅びるでしょうかと。

【解説】

季康子と孔子の対話は、論語に多く収録されています。孔子の弟子を多く召し抱えたことからも、孔子に信頼を寄せていたことが想像できます。その季康子に対して季康子と同じ大夫たちが国を支えている実状を伝えます。季康子はどう感じたのでしょうか。彼の下に優秀な人材を置けば、自ずと国が治まると伝えたかったのでしょうか。孔子の門下生を雇ってお終いではなく、権限を委譲し能力を発揮できるようにせよというメッセージだったかも知れません。また、この言葉をきっかけに孔子門下の優秀な人材を登用したのかも知れません。
このひとつ前の章句では、優秀な部下を自分と同じ処遇に引き上げるよう主君に伝えた公叔文子が紹介されています。二つの章句に触れた論語の読者は、優秀な人材の登用だけでなく権限委譲を意識したに違いありません。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四19< | >憲問第十四21


【原文・白文】
 子言衛霊公之無道也。康子曰、夫如是、奚而不喪。孔子曰、仲叔圉治賓客、祝鮀治宗廟、王孫賈治軍旅。夫如是、奚其喪。
<子言衞靈公之無道也。康子曰、夫如是、奚而不喪。孔子曰、仲叔圉治賓客、祝鮀治宗廟、王孫賈治軍旅。夫如是、奚其喪。>

(子衛の霊公の無道なるを言う。康子曰わく、夫れ是くの如くんば、奚にしてか喪びざる。孔子曰わく、仲叔圉は賓客を治め、祝鮀は宗廟を治め、王孫賈は軍旅を治む。夫れ是くの如くんば、奚ぞ其れ喪びん。)
【読み下し文】
 子(し)衛(えい)の霊公(れいこう)の無道(むどう)なるを言(い)う。康子(こうし)曰(い)わく、夫(そ)れ是(か)くの如(ごと)くんば、奚(いか)にしてか喪(ほろ)びざる。孔子(こうし)曰(のたま)わく、仲叔圉(ちゅうしゅくぎょ)は賓客(ひんきゃく)を治(おさ)め、祝鮀(しゅくだ)は宗廟(そうびょう)を治(おさ)め、王孫賈(おうそんか)は軍旅(ぐんりょ)を治(おさ)む。夫(そ)れ是(か)くの如(ごと)くんば、奚(なん)ぞ其(そ)れ喪(ほろ)びん。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四19< | >憲問第十四21


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