論語、素読会

君君たり、臣臣たり、父父たり、子子たり|「論語」顔淵第十二11

斉の国の景公が政治について孔先生に尋ねられた。孔先生が答えておっしゃった、君主は君主らしく、臣下は臣下らしく、父は父らしく、子は子らしくと。景公が言われた、よいことを言うね、確かにもし君主が君主らしくなく、臣下が臣下らしくなく、父が父らしくなく、子が子らしくなければ、食糧があったとしても、私は満足してこれを食べることができようかと。|「論語」顔淵第十二11

【現代に活かす論語】
政治とは、首長は首長らしく、官吏は官吏らしく、父親は父親らしく、子は子らしく。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

13:35「顔淵第十二」前半01 – 13 素読
2023.05.09収録

【解釈】

景公(けいこう) … 斉の君。名は杵臼(しょきゅう)。「論語」の登場人物|論語、素読会

斉の景公政を孔子に問う。孔子対えて曰わく、君君たり、臣臣たり、父父たり、子子たり。公曰わく、善いかな、信に如し君君たらず、臣臣たらず、父父たらず、子子たらずんば、粟有りと雖も、吾得て諸を食わんや。|「論語」顔淵第十二11
斉景公問政於孔子。孔子対曰、君君、臣臣、父父、子子。公曰、善哉、信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。

「政」(まつりごと)は政治。「対」(こたえる)は上位者からの質問に答える。「君」(きみ)は統治者の通称、王者、天子・諸侯・卿・大夫など。「臣」(しん)は官吏、家来。「善」(よい)はよい。「信」(まこと)は確かに、うたがいもなく。「如」(もし)はもしも…ならば。「粟」(ぞく)は食糧、かて。「得」(える)は得意になる、満足する。

斉の国の景公が政治について孔先生に尋ねられた。孔先生が答えておっしゃった、君主は君主らしく、臣下は臣下らしく、父は父らしく、子は子らしくと。景公が言われた、よいことを言うね、確かにもし君主が君主らしくなく、臣下が臣下らしくなく、父が父らしくなく、子が子らしくなければ、食糧があったとしても、私は満足してこれを食べることができようかと。

【解説】

文献によると、景公は決して徳のある君主ではなかったようです。その景公が孔子に政治について尋ねたのですから、孔子が返した言葉には皮肉が込められていたと考えるべきでしょう。この孔子の意図が景公に伝わったのか、「善哉、信如」と景公が返す部分、読み下しの工夫もありますが、言い負けまいとする景公の性格が表れているようで味わいがあります。さらに、食糧があっても満足して食べることができないとは、食糧に困ることがない景公の生活が透けて見えるようです。
孔子のことばに、父と子が登場するのは、家庭で年長者を敬うこと慎み深く生活することは政治に繋がるという考えからです。「(君子を目指す)若者は、家庭内では親孝行を行い、外では目上の人に対して素直でありたい。弟子、入りては則ち孝|「論語」学而第一06)」
孔子が言う、君君、臣臣、父父、子子と、景公が考える、君君、臣臣、父父、子子というのは同じ意味なのでしょうか。私には異なるように思えてなりません。この章句を取り上げるとき、是非、各々が感じる「君君、臣臣、父父、子子」の意味について意見を交わしていただきたいと思います。

【一緒に考えてみよう】

あなたにとっての「君君、臣臣、父父、子子(君主は君主らしく、臣下は臣下らしく、父は父らしく、子は子らしく)」とは、どういうことでしょうか? 孔子にとって、景公にとっての「君君、臣臣、父父、子子」についても考えてみましょう。


「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二10< | >顔淵第十二12


【原文・白文】
 斉景公問政於孔子。孔子対曰、君君、臣臣、父父、子子。公曰、善哉、信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。
<齊景公問政於孔子。孔子對曰、君君、臣臣、父父、子子。公曰、善哉、信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。>

(斉の景公政を孔子に問う。孔子対えて曰わく、君君たり、臣臣たり、父父たり、子子たり。公曰わく、善いかな、信に如し君君たらず、臣臣たらず、父父たらず、子子たらずんば、粟有りと雖も、吾得て諸を食わんや。)
【読み下し文】
 斉(せい)の景公(けいこう)政(まつりごと)を孔子(こうし)に問(と)う。孔子(こうし)対(こた)えて曰(のたま)わく、君(きみ)君(きみ)たり、臣(しん)臣(しん)たり、父(ちち)父(ちち)たり、子(こ)子(こ)たり。公(こう)曰(い)わく、善(よ)いかな、信(まこと)に如(も)し君(きみ)君(きみ)たらず、臣(しん)臣(しん)たらず、父(ちち)父(ちち)たらず、子(こ)子(こ)たらずんば、粟(ぞく)有(あ)りと雖(いえど)も、吾(われ)得(え)て諸(これ)を食(くら)わんや。


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