論語、素読会

盍ぞ各爾の志を言わざる|「論語」公冶長第五26

顔淵と季路が孔子に付き添っていた。孔先生がおっしゃった、どうだ志について話してみないか?子路は答えた、車でも馬でも上衣でも毛皮の外套でも友だちと共有し合って、これを破れるほど使われても惜しいと思わないようになりたいです。顔淵は答えた、善いことをしても自慢せず、苦労を他人に押しつけないようにしたいと思います。子路は孔先生の志を聞きたいと願ったので、孔先生がおっしゃった。年寄りが安心するようにしたい、友だちは信頼し合えるようにしたい、若者には慣れ親しんでもらえるようにしたいものだ。|「論語」公冶長第五26

【現代に活かす論語】
部下とそれぞれの志(ミッション)について語り合うことは大切です。

車でも上等の衣類でも友人と共有する。そしてぼろぼろになっても惜しまない。そんな友人関係も大切です。

善いことをしても自慢せず、苦労を他人に押しつけない。

お年寄りが安心して生活し、友人と信頼し合い、若者が年長者と親しく付き合える社会。それが孔子が作ろうとした国です。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
16:40 「公冶長第五」後半16-28 素読
2021.8.19収録

【解釈】

顔淵(がんえん) … 姓は顔(がん)、名は回(かい)、字は子淵(しえん)。孔子より三十歳若い。孔子よりも早く、三十歳(一説では四十歳とも)で死んだ。秀才で、門人の中で一番の学問好き。孔子の第一の弟子ともいわれる。「論語」の登場人物|論語、素読会

季路(きろ)子路(しろ) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。「論語」の登場人物|論語、素読会
千乗の規模を誇る国の軍隊を扱わせるだけの能力があると評価されていた。
学びをひとつひとつ実践することを心がけ、それが不十分であれば新しい学びを知ることさえ恐れる実直さを持っていた。

顏淵季路侍す。子曰わく、盍ぞ各爾の志を言わざる。子路曰わく、願わくは車馬衣軽裘、朋友と共にし、之を敝りても憾むこと無からん。顏淵曰わく、願わくは善に伐ること無く、労を施すこと無からん。子路曰わく、願わくは子の志を聞かん。子曰わく、老者は之を安んじ、朋友は之を信じ、少者は之を懷けん。|「論語」公冶長第五26
顏淵季路侍。子曰、盍各言爾志。子路曰、願車馬衣軽裘、与朋友共、敝之而無憾。顏淵曰、願無伐善、無施労。子路曰、願聞子之志。子曰、老者安之、朋友信之、少者懷之。

「侍」(じす)は目上の人のそばにつき従う。「盍」(なんぞ)はどうして〜しない?の意。「爾」(なんじ)はお前たち、きみたち。「軽裘」(けいきゅう)は軽くて温かい毛皮でできた衣。「朋友」(ほうゆう)は友だち。「敝」(やぶる)は壊と同じ。破れる。「憾」(うらむ)はこの場合、惜しいと思うこと。「伐」(ほこる)は誇る。「施」(うつす)は移す。「少者」(しょうしゃ)は若い人。「懷」(なつく)は慣れ親しむ。

顔淵と季路が孔子に付き添っていた。孔先生がおっしゃった、どうだ志について話してみないか?子路は答えた、車でも馬でも上衣でも毛皮の外套でも友だちと共有し合って、これを破れるほど使われても惜しいと思わないようになりたいです。顔淵は答えた、善いことをしても自慢せず、苦労を他人に押しつけないようにしたいと思います。子路は孔先生の志を聞きたいと願ったので、孔先生がおっしゃった。年寄りが安心するようにしたい、友だちは信頼し合えるようにしたい、若者には慣れ親しんでもらえるようにしたいものだ。

【解説】

子路、顔淵の人柄が表れています。子路の志は自分の持ち物に対する執着を表していて彼がその心持ちから解放されたいと思っていることの表れです。孔子の志を聞き返すなど、粗野だけれども人間味がある様子がうかがえます。顔淵はあくまでも謙虚です。そして孔子の志は大きい。
孔子が生きた春秋時代にあって、老人が安心して過ごせる平穏と、友だち同士が疑心暗鬼になることなく信じ合える安寧。若者が戦争に借り出されることなく年長者を尊敬することができる国の政治を願っているのだと思います。


「論語」参考文献|論語、素読会
公冶長第五25< | >公冶長第五27


【原文・白文】
 顏淵季路侍。子曰、盍各言爾志。子路曰、願車馬衣軽裘。与朋友共、敝之而無憾。顏淵曰、願無伐善、無施労。子路曰、願聞子之志。子曰、老者安之、朋友信之、少者懷之。
<顏淵季路侍。子曰、盍各言爾志。子路曰、願車馬衣輕裘。與朋友共、敝之而無憾、顏淵曰、願無伐善、無施勞。子路曰、願聞子之志。子曰、老者安之、朋友信之、少者懷之。>

(顏淵季路侍す。子曰わく、盍ぞ各爾の志を言わざる。子路曰わく、願わくは車馬衣軽裘、朋友と共にし、之を敝りても憾むこと無からん。顏淵曰わく、願わくは善に伐ること無く、労を施すこと無からん。子路曰わく、願わくは子の志を聞かん。子曰わく、老者は之を安んじ、朋友は之を信じ、少者は之を懷けん。)
※車馬衣軽裘の「軽」は衍字(えんじ)[間違って入った字]ではないかとのこと。
【読み下し文】
 顏淵(がんえん)季路(きろ)侍(じ)す。子(し)曰(のたま)わく、盍(なん)ぞ各(おのおの)爾(なんじ)の志(こころざし)を言(い)わざる。子路(しろ)曰(い)わく、願(ねが)わくは車馬衣軽裘(しゃばいけいきゅう)、朋友(ほうゆう)と共(とも)にし、之(これ)を敝(やぶ)りても憾(うら)むこと無(な)からん。顏淵(がんえん)曰(い)わく、願(ねが)わくは善(ぜん)に伐(ほこ)ること無(な)く、労(ろう)を施(ほどこ)すこと無(な)からん。子路(しろ)曰(い)わく、願(ねが)わくは子(し)の志(こころざし)を聞(き)かん。子(し)曰(のたま)わく、老者(ろうしゃ)は之(これ)を安(やす)んじ、朋友(ほうゆう)は之(これ)を信(しん)じ、少者(しょうすう)は之(これ)を懷(なつ)けん。


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