論語、素読会

子楽しむ|「論語」先進第十一12

閔子騫は(孔先生の)そばに従っている、穏やかであった。子路は剛強であった。冉有、子貢は穏やかに打ち解けていた。孔先生は(その中で)楽しんでいた。孔先生がおっしゃった、由(子路)に関しては(普通に)死ぬことはできないだろう。|「論語」先進第十一12

【現代に活かす論語】
部下たちと楽しく歓談する中でもそれぞれの行く末を案じる、そんなひとでありたい。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

09:45「先進第十一」前半1 – 16 素読
2023.02.13収録

【解釈】

閔子騫(びんしけん) … 姓は閔、名は損(そん)、字は子騫。孔子より15歳若い。 「論語」の登場人物|論語、素読会

子路(しろ) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。「論語」の登場人物|論語、素読会

冉有(ぜんゆう) … 姓は冉(ぜん)、名は求(きゅう)また有(ゆう)。字は子有(しゆう)。孔子より29歳若い。

子貢(しこう) … 姓は端木(たんぼく)、名は賜(し)、字は子貢(しこう)。孔子より31歳若い。「論語」の中で孔子との問答がもっとも多い。

閔子騫側に侍す、誾誾如たり。子路行行如たり。冉有・子貢侃侃如たり。子楽しむ。曰わく、由の若きは、其の死を得ざるがごとく然り。|「論語」先進第十一12
閔子騫侍側、誾誾如也。子路行行如也。冉有子貢侃侃如也。子楽。曰、若由也、不得其死然。

「侍」(じす)は目上の人のそばにつき従う。「誾誾」(ぎんぎん)はおだやかに是非を説明するさま。「行行」(こうこう)は剛強なさま。「侃侃」(かんかん)はうちとけるさま。「若」(ごとき)は、…に至っては、…に関しては。「得」(える)は、…できる。「然」は文末に置き、決定や強い判断の語気を表す言葉。訓読しない。

閔子騫は(孔先生の)そばに従っている、穏やかであった。子路は剛強であった。冉有、子貢は穏やかに打ち解けていた。孔先生は(その中で)楽しんでいた。孔先生がおっしゃった、由(子路)に関しては(普通に)死ぬことはできないだろう。

【解説】

この章句は文献によって若干異なります。「集注」と「集解」の違いは以下の通りです。
集注:閔子侍側、誾誾如也。子路行行如也。冉有子貢侃侃如也。子楽。若由也、不得其死然。
集解:閔子騫侍側、誾誾如也。子路行行如也。冉有子貢侃侃如也。子楽。曰、若由也、不得其死然。

「閔子」と「閔子騫」両方の記述が存在します。また「子楽。若由也、」の間に「曰」を入れて、「子楽。曰、若由也、」とするものもあります。のこの章句の場面を想像する私の脳裏には、にこにこと笑う孔子の周りに車座に座っている弟子たちの様子が映し出されています。孔子の背中越しに弟子たちが歓談する様子に、この章句がナレーションのように重なります。再び子路の様子が映し出されたとき、孔子はポツリと思った、そんな場面を想像します。血気盛んで任侠新に熱い剛強な子路、孔子にとって大切であるが故にその行く末を案じている。そういう場面だと思います。
この章句をまとめたひとは、映像感覚に優れた人だったように思います。さまざまな才能が孔子の教えを残すために力を結集したのがこの論語なのではないかと思うのです。


「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一11< | >先進第十一13


【原文・白文】
 閔子騫侍側、誾誾如也。子路行行如也。冉有子貢侃侃如也。子楽。曰、若由也、不得其死然。
<閔子騫侍側、誾誾如也。子路行行如也。冉有子貢侃侃如也。子樂。曰、若由也、不得其死然。>

(閔子騫側に侍す、誾誾如たり。子路行行如たり。冉有・子貢侃侃如たり。子楽しむ。曰わく、由の若きは、其の死を得ざるがごとく然り。)
【読み下し文】
 閔子騫(びんしけん)側(そば)に侍(じ)す、誾誾(ぎんぎん)如(じょ)たり。子路(しろ)行行(こうこう)如(じょ)たり。冉有(ぜんゆう)・子貢(しこう)侃侃(かんかん)如(じょ)たり。子(し)楽(たの)しむ。曰わく、由(ゆう)の若(ごと)きは、其(そ)の死(し)を得(え)ざるがごとく然り。


「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一11< | >先進第十一13


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