冉先生が役所を退出された。孔先生がおっしゃった、どうして遅くなったのかと。(冉有は)答えて言った。政務が有りました。孔先生がおっしゃった、それは(政務ではなくて)私的な事務ではないのかと。もし政務があれば、私が現職でないとしても、私がそれをかかわり聞くであろう。|「論語」子路第十三14
【現代に活かす論語】
政治を限られたものだけで謀議してはなりません。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
12:10「子路第十三」前半01 – 15 素読
2023.10.01収録
【解釈】
冉子(ぜんし) … 冉有(ぜんゆう)求(きゅう)冉求(ぜんきゅう)。姓は冉(ぜん)、名は求(きゅう)また有(ゆう)。字は子有(しゆう)。孔子より二十九歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会
冉子朝より退く。子曰わく、何ぞ晏きや。対えて曰わく、政有り。子曰わく、其れ事ならん。如し政有らば、吾を以いずと雖も、吾其れ之を与り聞かん。|「論語」子路第十三14
冉子退朝。子曰、何晏也。対曰、有政。子曰、其事也。如有政、雖不吾以、吾其与聞之。
「朝」(ちょう)は君主が高級官僚が政務を処理した場所、朝廷。「晏」(おそい)は暮れどきのさま、時刻がおそい。「対」(こたえる)は上位者からの質問に答える。「如」(もし)はもし…ならば。「雖」(いえども)はAではあるけれどBではある。「以」(もちいる)は使用する、採用する。「与」(あずかる)は参加する、かかわる。
冉先生が役所を退出された。孔先生がおっしゃった、どうして遅くなったのかと。(冉有は)答えて言った。政務が有りました。孔先生がおっしゃった、それは(政務ではなくて)私的な事務ではないのかと。もし政務があれば、私が現職でないとしても、私がそれをかかわり聞くであろう。
【解説】
そのまま訳しただけでは何を伝えたい章句なのか分かりませんので、文献に助けてもらいます。この章句の場面では、冉有は魯の大夫、季氏の家老だったそうです。遅くまで掛かるような国の一大事であれば、孔子の耳にも入ってきますが、そうではないということは、季氏の個人的な実務であると考えたことがうかがえます。さらに、大事な政治の話を一部の人間だけで相談して決めているのではないかという思いが、このような章句に表れているといいます。孔子はそのような季氏の政治の私物化に加担しないよう、冉有を諌めているようにも感じます。
冉有に「子」を付けている点についてですが、これを書き留めたのが冉有の弟子であったからでしょうか。論語の編集者はこれを冉求と直さず掲載したか、また敢えて冉子として掲載したか、その辺りの意図は定かではありません。ただ、子路第十三にこの章句を置いたということであれば、冉有とするか冉子とするかはあまり問題ではなかったのかも知れません。
「論語」参考文献|論語、素読会
子路第十三13< | >子路第十三15
【原文・白文】
冉子退朝。子曰、何晏也。対曰、有政。子曰、其事也。如有政、雖不吾以、吾其与聞之。
<冉子退朝。子曰、何晏也。對曰、有政。子曰、其事也。如有政、雖不吾以、吾其與聞之。>
(冉子朝より退く。子曰わく、何ぞ晏きや。対えて曰わく、政有り。子曰わく、其れ事ならん。如し政有らば、吾を以いずと雖も、吾其れ之を与り聞かん。)
【読み下し文】
冉子(ぜんし)朝(ちょう)より退(しりぞ)く。子(し)曰(のたま)わく、何(なん)ぞ晏(おそ)きや。対(こた)えて曰(い)わく、政(まつりごと)有(あ)り。子(し)曰(のたま)わく、其(そ)れ事(こと)ならん。如(も)し政(まつりごと)有(あ)らば、吾(われ)を以(もち)いずと雖(いえど)も、吾(われ)其(そ)れ之(これ)を与(あずか)り聞(き)かん。
「論語」参考文献|論語、素読会
子路第十三13< | >子路第十三15