論語、素読会

才あるも才あらざるも、亦各ゝ其の子と言うなり|「論語」先進第十一07

顔淵が死んだ。顔淵の父、願路は孔子の車を売って外棺に代えて欲しいと請うた。孔先生がおっしゃった、賢いと賢くないとに関わらず、ひと(親)はそれぞれの子のことを(思って)言うだろう。(孔子の子)鯉が死んだとき、棺はあったが外棺は無かった。私が(車を売ったことで)乗り物に乗らずに歩くことにして外棺を作ること、これをしなかったのは、私が大夫の末席にたずさわる立場のために徒歩で歩くことができないからだ。|「論語」先進第十一07

【現代に活かす論語】
わが子が賢いと賢くないとに関わらず、親はそれぞれの子のことを思って行動するだろう。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

13:05「先進第十一」前半1 – 16 素読
2023.01.24収録

【解釈】

顔淵(がんえん) … 姓は顔(がん)、名は回(かい)、字は子淵(しえん)。孔子より三十歳若い。孔子よりも早く、三十歳(一説では四十歳とも)で死んだ。秀才で、門人の中で一番の学問好き。孔子の第一の弟子ともいわれる。「論語」の登場人物|論語、素読会

顔路(がんろ) … 顔回の父。孔子の最初の弟子の一人であったらしい。 「論語」の登場人物|論語、素読会

鯉(り) … 孔子の一人息子。名は鯉(り)、字は伯魚(はくぎょ)。

顔淵死す。顔路子の車以て之が椁を為らんことを請う。子曰わく、才あるも才あらざるも、亦各ゝ其の子と言うなり。鯉や死す、棺有りて椁無し。吾徒行して以て之が椁を為らざりしは、吾が大夫の後に従えるを以て、徒行すべからざるなり。|「論語」先進第十一07
顔淵死。顔路請子之車以為之椁。子曰、才不才、亦各言其子也。鯉也死、有棺而無椁。吾不徒行以為之椁、以吾従大夫之後、不可徒行也。

「子」は孔子を指す。「以」(もって)は使用する。「椁」(かく)は棺を納める外棺、うわひつぎ。埋葬には木製の外棺が用いられる。「吾」(われ)は私。「徒行」(とこう)は乗り物に乗らないで歩いて行く。「大夫」(たいふ)は官吏の身分のひとつ、中央の要職や顧問など、重要な地位をしめる場合が多い。「後」(しりえ)は最後、すえ。「従」(したがう)は加わる、たずさわる。「以」(もって)は理由や原因を表す。

顔淵が死んだ。顔淵の父、願路は孔子の車を売って外棺に代えて欲しいと請うた。孔先生がおっしゃった、賢いと賢くないとに関わらず、ひと(親)はそれぞれの子のことを(思って)言うだろう。(孔子の子)鯉が死んだとき、棺はあったが外棺は無かった。私が(車を売ったことで)乗り物に乗らずに歩くことにして外棺を作ること、これをしなかったのは、私が大夫の末席にたずさわる立場のために徒歩で歩くことができないからだ。

【解説①】

「以」(もって)の意味ですが、1つ目は車を使用して外棺を作るということから、車を売って外棺に代えるとしました。2つ目は理由を表すことから、大夫の末(末席)にいる(いた)立場から車を使用しなければならないという解釈にしました。文献によると、一度大夫を経験した人は退官後も車に乗って移動することを求められていたそうです。

この章句から伝わることは、顔淵の家庭は経済的に恵まれていなかったであろうということ、同時に孔子も経済的に余裕がなかったこと。顔淵を埋葬するために外棺を設えたい父が孔子にこの希望を伝えられるという師弟関係があったということ。大夫を経験すると車を使わなければならなかったこと。などでしょうか。その上で、この章句を選んだ編者が何を伝えたかったのかというと、「才あるも才あらざるも、亦各ゝ其の子と言うなり。」つまり師匠の車を売って外棺を用立てて欲しいという親心に理解を示しつつも、しきたりを重んじる孔子の心のうちを説明したかったのではないかと思うのです。

【解説②】

この章句は、顔淵が亡くなった年齢を確定する根拠のひとつです。孔子の息子「鯉」は顔淵より先に亡くなっていたことが分かります。


「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一06< | >先進第十一08


【原文・白文】
 顔淵死。顔路請子之車以為之椁。子曰、才不才、亦各言其子也。鯉也死、有棺而無椁。吾不徒行以為之椁、以吾従大夫之後、不可徒行也。
<顏淵死。顏路請子之車以爲之椁。子曰、才不才、亦各言其子也。鯉也死、有棺而無椁。吾不徒行以爲之椁、以吾從大夫之後、不可徒行也。>

(顔淵死す。顔路子の車以て之が椁を為らんことを請う。子曰わく、才あるも才あらざるも、亦各ゝ其の子と言うなり。鯉や死す、棺有りて椁無し。吾徒行して以て之が椁を為らざりしは、吾が大夫の後に従えるを以て、徒行すべからざるなり。)
【読み下し文】
 顔淵(がんえん)死(し)す。顔路(がんろ)子(し)の車(くるま)以(もっ)て之(これ)が椁(かく)を為(つく)らんことを請(こ)う。子(し)曰(のたま)わく、才(さい)あるも才(さい)あらざるも、亦(また)各ゝ(おのおの)其(そ)の子(こ)と言(い)うなり。鯉(り)や死(し)す、棺(かん)有(あ)りて椁(かく)無(な)し。吾(われ)徒行(とこう)して以(もっ)て之(これ)が椁(かく)を為(つく)らざりしは、吾(わ)が大夫(たいふ)の後(しりえ)に従(したが)えるを以(もっ)て、徒行(とこう)すべからざるなり。


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