論語、素読会

立つ門に中せず。行くに閾を履まず|「論語」郷党第十04

(孔先生は)役所の門をくぐるときには、身をかがめてうやうやしく、そのようすは入れないのではないかと思うくらいだった。門の中央に立たず。敷居を履むこともなかった。座所の前を通るときは、顔つきを変えて、敬意を表して小走りに歩いた。その言葉は謹んで少なく充分でないようだ。衣服の裾をかかげてお堂に登るときは、身をかがめておそれ敬った。気配を殺して息をしていないもののようだ。(お堂から)出て階段を一段降りれば、顔色をゆるめ楽しむようすだ。階段を降りて小走りに進むときは鳥が翼を広げたようにうやうやしく両ひじを開いた。自分の席に復れば、敬い謹んでいた。|「論語」郷党第十04

【現代に活かす論語】
2,500年以上前からの作法。門の中央を歩かず、敷居はまたぐ。門の中央は天子が通るべき場所で、敷居を履むのは無作法と考えられていた。

【解釈】

公門に入るに、鞠躬如たり。容れられざるが如くす。立つ門に中せず。行くに閾を履まず。位を過ぐれば、色勃如たり、足躩如たり。其の言うこと足らざる者に似たり。斉を攝げて堂に升るに、鞠躬如たり。気を屛めて息せざる者に似たり。出でて一等を降れば、顏色を逞ちて、怡怡如たり。階を沒せば趨り進むこと、翼如たり。其の位に復れば、踧踖如たり。|「論語」郷党第十04
入公門、鞠躬如也。如不容。立不中門。行不履閾。過位、色勃如也、足躩如也。其言似不足者。摂斉升堂、鞠躬如也。屛気似不息者。出降一等、逞顏色、怡怡如也。沒階趨進、翼如也。復其位、踧踖如也。

「公」(こう)は朝廷・役所・官署。「鞠躬如」(きっきゅうじょ)は、身をかがめておそれ敬うさま。「容」(いれる)は、うけ入れる。「中」(ちゅう)は、区切られた空間の真ん中。中央。「閾」(しきい)は、門の敷居。「位」(くらい)は、群臣が朝廷で地位に応じて立つところ。座所。「色」(しき)は、顔つき、表情。「勃」(ぼつ)は、顔色が変わるさま。「躩如」(かくじょ)は、敬意を表して小走りに行くさま。「斉」(もすそ)は、衣服のすそ。「摂」(かかげる)は、衣服のすそをめくる、かかげる。「堂」(どう)は、大広間。「升」(のぼる)は、低い所から高い所へ移る、上にあがる。「鞠躬如」(きっきゅうじょ)は、身をかがめて、おそれ敬うさま。「屛」(おさめる)は、息を殺す、息をひそめる。「等」(とう)は、階段やはしごなどの段。「逞」(はなつ)は、のびやかにする、ゆるめる。「怡怡」(いい)は、喜び楽しむさま。「沒」(つくす)は、歩き終わる。「趨」(はしる)は、小走りに進む。「翼如」(よくじょ)は、鳥が両翼を広げたように組んだ腕の両ひじを張るさま、態度のうやうやしいさま。「踧踖」(しゅくせき)は、敬い謹むさま。

(孔先生は)役所の門をくぐるときには、身をかがめてうやうやしく、そのようすは入れないのではないかと思うくらいだった。門の中央に立たず。敷居を履むこともなかった。座所の前を通るときは、顔つきを変えて、敬意を表して小走りに歩いた。その言葉は謹んで少なく充分でないようだ。衣服の裾をかかげてお堂に登るときは、身をかがめておそれ敬った。気配を殺して息をしていないもののようだ。(お堂から)出て階段を一段降りれば、顔色をゆるめ楽しむようすだ。階段を降りて小走りに進むときは鳥が翼を広げたようにうやうやしく両ひじを開いた。自分の席に復れば、敬い謹んでいた。

【解説】

役所での孔子のようすを表す章句です。たとえ君子が不在でもその座所の前を通り過ぎたり大広間(お堂)に登るときは謹んでうやうやしくするようすが伝わります。敷居を履まず、門の中央を歩かないという作法は現代日本にも受け継がれていると思います。
孔子のようすによって、朝廷での模範的な立ち居振る舞いを後進に伝えようとしています。
2,500年以上前から門の中央は天子が通るためのもの。敷居を履むのは無作法で、ほかの人の着物の裾を汚すことにも繋がると考えられていたようです。


「論語」参考文献|論語、素読会
郷党第十03< | >郷党第十05


【原文・白文】
 入公門、鞠躬如也。如不容。立不中門。行不履閾。過位、色勃如也、足躩如也。其言似不足者。摂斉升堂、鞠躬如也。屛気似不息者。出降一等、逞顏色、怡怡如也。沒階趨進、翼如也。復其位、踧踖如也。
<入公門、鞠躬如也。如不容。立不中門。行不履閾。過位、色勃如也、足躩如也。其言似不足者。攝齊升堂、鞠躬如也。屛氣似不息者。出降一等、逞顏色、怡怡如也。沒階趨進、翼如也。復其位、踧踖如也。>

(公門に入るに、鞠躬如たり。容れられざるが如くす。立つ門に中せず。行くに閾を履まず。位を過ぐれば、色勃如たり、足躩如たり。其の言うこと足らざる者に似たり。斉を摂げて堂に升るに、鞠躬如たり。気を屛めて息せざる者に似たり。出でて一等を降れば、顏色を逞ちて、怡怡如たり。階を沒せば趨り進むこと、翼如たり。其の位に復れば、踧踖如たり。)
【読み下し文】
 公門(こうもん)に入(い)るに、鞠躬(きっきゅう)如(じょ)たり。容(い)れられざるが如(ごと)くす。立(た)つ門(もん)に中(ちゅう)せず。行(い)くに閾(しきい)を履(ふ)まず。位(くらい)を過(す)ぐれば、色勃(いろぼつ)如(じょ)たり、足躩(あしかく)如(じょ)たり。其(そ)の言(い)うこと足(た)らざる者(もの)に似(に)たり。斉(もすそ)を摂(かか)げて堂(どう)に升(のぼ)るに、鞠躬(きっきゅう)如(じょ)たり。気(き)を屛(おさ)めて息(いき)せざる者(もの)に似(に)たり。出(い)でて一等(いっとう)を降(くだ)れば、顏色(がんしょく)を逞(はな)ちて、怡怡(いい)如(じょ)たり。階(かい)を沒(つ)せば趨(はし)り進(すす)むこと、翼(よく)如(じょ)たり。其(そ)の位(くらい)に復(かえ)れば、踧踖(しゅくせき)如(じょ)たり。


「論語」参考文献|論語、素読会
郷党第十03< | >郷党第十05