論語、素読会

賢者は世を辟く|「論語」憲問第十四39

孔先生がおっしゃった、賢者は(乱れた)世の中を避ける。その次は(徳政が行われない)国からのがれる。その次は(主君の)表情・態度から(判断して)のがれる。その次は(主君の)言葉を(判断して)避けると。孔先生がおっしゃった、これを行った者は七人いると。|「論語」憲問第十四39

【現代に活かす論語】
賢いひとは、乱れた環境を避けます。

正しい政治や正しい企業活動が行われないとき、その職場を避け、場合によってはその組織・企業を退職する。そして時には上司や先輩の態度を見て、言葉からも判断し、その環境を避けることができるような賢い人物でありたい。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

10:40「憲問第十四」後半22 – 46 素読
2024.2.4収録

【解釈】

子曰わく、賢者は世を辟く。其の次は地を辟く。其の次は色を辟く。其の次は言を辟く。子曰わく、作す者七人。|「論語」憲問第十四39
子曰、賢者辟世。其次辟地。其次辟色。其次辟言。子曰、作者七人矣。

「賢」(けん)は才能と徳をもった人。「世」(よ)は世の中、天下、社会。「辟」(さける)はかわす、のがれる。「地」(ち)は土地。「色」(いろ)は顔つき、表情。

孔先生がおっしゃった、賢者は(乱れた)世の中を避ける。その次は(徳政が行われない)国からのがれる。その次は(主君の)表情・態度から(判断して)のがれる。その次は(主君の)言葉を(判断して)避けると。孔先生がおっしゃった、これを行った者は七人いると。

【解説】

ここまでのいくつかの章句から考えると、この章句の背景として「道」が行われていない世の中、国、君主の態度、君主の言動があると思います。目前に正しいことや正しい政治が行われていない場合に、賢者はそこから逃れたり、避けるというのです。ひとつ前の章句で季孫氏を含む三桓の権限を削ごうと画策した孔子ですが、挫折した可能性を感じさせます。この章句を含めた本篇の流れで、客観的に考えても徳政が行われない国を見限っていいものか、孔子の葛藤を含んだ章句のように感じます。
私たちはこの章句を企業や組織に置き換えることもできます。ものごとが正しく行われない場合はその職場を避け、場合によってはその組織・企業を退職し、時には上司や先輩の態度を見て、言葉からも判断し、その環境を避けることができるような賢い人物でありたい、と。
さらに、順序を考えた場合、まずその組織・土地から離れて距離を取り、そこであらためて人の顔付き、言葉を判断してみるという筋立てになっていると考えられます。つまり渦中にいれば、冷静な判断が難しいということを端的に示しているのではないでしょうか。まず距離を取ってそして冷静に判断する。このロジカルな考え方を孔子から学ぶことができる章句なのかも知れません。

最後に、これを行った者は七人いるという点が気になります。論点としては、この七人を特定するより、該当者に心当たりがある、しかも複数名、自分だけはない。という点がポイントで、孔子自身の考えだけでなく、他にも同じ考えの人がいるよ。という解釈もできるのではないかと思います。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四38< | >憲問第十四40


【原文・白文】
 子曰、賢者辟世。其次辟地。其次辟色。其次辟言。子曰、作者七人矣。

(子曰わく、賢者は世を辟く。其の次は地を辟く。其の次は色を辟く。其の次は言を辟く。子曰わく、作す者七人。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、賢者(けんじゃ)は世(よ)を辟(さ)く。其(そ)の次(つぎ)は地(ち)を辟(さ)く。其(そ)の次(つぎ)は色(いろ)を辟(さ)く。其(そ)の次(つぎ)は言(げん)を辟(さ)く。子(し)曰(のたm)わく、作(な)す者(もの)七人(しちにん)。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四38< | >憲問第十四40


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