論語、素読会

是れ其の不可なるを知りて、而も之を為す者か|「論語」憲問第十四40

子路が国の城外の石の門で夜を明かした。朝、門番が話し掛けた、どちらから来たのかと。子路は言った、孔家の一行の者ですと。門番がこう言った。その方はできないとわかっていても、なんとかこれを成そうとされる方ですかと。|「論語」憲問第十四40

【現代に活かす論語】
世の中がどうにもならないと分かっていても、何とかしようとするひとが孔子です。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

06:35「憲問第十四」後半22 – 46 素読
2024.2.4収録

【解釈】

子路(しろ) … 季路(きろ)由(ゆう)仲由(ちゅうゆう)。姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若い。孔子のボディガード役を果たした。

子路石門に宿る。晨門曰わく、奚れ自りぞ。子路曰わく、孔氏自りす。曰わく、是れ其の不可なるを知りて、而も之を為す者か。|「論語」憲問第十四40
子路宿於石門。晨門曰、奚自。子路曰、自孔氏。曰、是知其不可、而為之者与。

「石門」(せきもん)は城外の石の門。「晨門」(しんもん)は門番(朝早くに城門を開くことから)。「奚」(いずれ)は何と同じ。「自」(より)は…から。

子路が国の城外の石の門で夜を明かした。朝、門番が話し掛けた、どちらから来たのかと。子路は言った、孔家の一行の者ですと。門番がこう言った。その方はできないとわかっていても、なんとかこれを成そうとされる方ですかと。

【解説】

この章句の場面は、文献の助けを借りて解釈します。石門は土地の名前であるという説もあるようですが、ここでは門番がいることから、地名ではなく国を隔てるような堅牢な門を想像してみました。この章句のポイントは、門番でさえも孔子の評価をできるだけの噂話、逸話が伝わっているということでしょう。国を隔てるような門としたのも、国をまたいで旅をするような人物を実検する場所で働く方がそのような情報に触れやすいからです。この門番が耳にした噂というのがどんな話しだったか分かりませんが、このような表現で自分の師を評価された子路は、大変誇らしかったに違いありません。
我々はこの章句の前で、徳政を広めることに挫折した様子の孔子に出合います。この章句を挟むことで読み手の挫けた気持ちを鼓舞する目的もあったのでは無いでしょうか。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四39< | >憲問第十四41


【原文・白文】
 子路宿於石門。晨門曰、奚自。子路曰、自孔氏。曰、是知其不可、而為之者与。
<子路宿於石門。晨門曰、奚自。子路曰、自孔氏。曰、是知其不可、而爲之者與。>

(子路石門に宿る。晨門曰わく、奚れ自りぞ。子路曰わく、孔氏自りす。曰わく、是れ其の不可なるを知りて、而も之を為す者か。)
【読み下し文】
 子路(しろ)石門(せきもん)に宿(やど)る。晨門(しんもん)曰(い)わく、奚(いず)れ自(よ)りぞ。子路(しろ)曰(い)わく、孔氏(こうし)自(よ)りす。曰(い)わく、是(こ)れ其(そ)の不可(ふか)なるを知(しり)りて、而(しか)も之(これ)を為(なす)す者(もの)か。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四39< | >憲問第十四41


※Kindle版