子路が尋ねた、聞いたままにこれ(聞いたばかりのこと)を行うのはどうでしょうか。孔先生がおっしゃった、父兄がいるではないか。どうして聞いたばかりのことを聞いたままに(誰にも相談せずに)行うのであろうか。冉有が尋ねた、聞いたままに聞いたばかりのことを行うのはどうでしょうか。孔先生がおっしゃった、聞いたままに(すぐに)行いなさい。公西華が言った、由が尋ねたときは(相談すべき)父兄がいるではないかとおっしゃいました。求が尋ねたときはすぐに行えとおっしゃいました。私(赤)は戸惑っています、思い切ってうかがわせてください。孔先生がおっしゃった、求はひっこみ思案であるので、進めるようにした。由は人より優れているので、控えさせるようにしたのだよ。|「論語」先進第十一21
【現代に活かす論語】
「聞いたことをすぐに実行に移す」ことは大事だが、ひっこみ思案であれば直ちに行動し、優秀であれば身内に相談してから行動すべきです。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
16:05「先進第十一」後半19 – 25 素読
2023.03.08収録
【解釈】
子路(しろ)、由(ゆう) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。「論語」の登場人物|論語、素読会
冉有(ぜんゆう)、求(きゅう) … 冉求(ぜんきゅう)。姓は冉(ぜん)、名は求(きゅう)また有(ゆう)。字は子有(しゆう)。孔子より29歳若い。
公西華(こうせいか) … 姓は公西(こうせい)、名は赤(せき)、字は子華(しか)。孔子より四十二歳若い。儀式・礼法に通じ、孔子が亡くなったときの葬儀委員長を務めたという。「論語」の登場人物|論語、素読会
子路問う、聞くままに斯れ諸を行わんか。子曰わく、父兄の在すこと有り。之を如何ぞ其れ聞くままに斯れ之を行わんや。冉有問う、聞くままに斯れ諸を行わんか。子曰わく、聞くままに斯れ之を行え。公西華曰わく、由や問う、聞くままに斯れ諸を行わんかと。子曰わく、父兄の在すこと有りと。求や問う、聞くままに斯れ諸を行わんかと。子曰わく、聞くままに斯れ之を行えと。赤や惑う。敢て問う。子曰わく、求や退く。故に之を進む。由や人を兼ぬ。故に之を退く。|「論語」先進第十一21
子路問、聞斯行諸。子曰、有父兄在。如之何其聞斯行之。冉有問、聞斯行諸。子曰、聞斯行之。公西華曰、由也問、聞斯行諸。子曰、有父兄在。求也問、聞斯行諸。子曰、聞斯行之。赤也惑。敢問。子曰、求也退。故進之。由也兼人。故退之。
「斯」(これ)はこれ、この、ここ。「諸」(これ)はこれ(ら)。「如何」(いかん)はどうして…しようか、どうして…であろうか。「敢」(あえて)は思い切って行う。「退」(しりぞく)はひっこみ思案であるさま。「退」(しりぞく)は後に引かせる。対義語は「進」。「兼」(かぬ)は優れている。
子路が尋ねた、聞いたままにこれ(聞いたばかりのこと)を行うのはどうでしょうか。孔先生がおっしゃった、父兄がいるではないか。どうして聞いたばかりのことを聞いたままに(誰にも相談せずに)行うのであろうか。冉有が尋ねた、聞いたままに聞いたばかりのことを行うのはどうでしょうか。孔先生がおっしゃった、聞いたままに(すぐに)行いなさい。公西華が言った、由が尋ねたときは(相談すべき)父兄がいるではないかとおっしゃいました。求が尋ねたときはすぐに行えとおっしゃいました。私(赤)は戸惑っています、思い切ってうかがわせてください。孔先生がおっしゃった、求はひっこみ思案であるので、進めるようにした。由は人より優れているので、控えさせるようにしたのだよ。
【解説】
ことばのリズムを感じられる章句です。この章句を読み下した先人にも感心します。
聞いたことをすぐ実行に移す際、相談をするべきとする子路と、すぐに行うべしとする冉有。孔子が弟子の性格を把握した上でアドバイスしていることを裏付けています。学びそして習うことを推奨する孔子の教えであっても、その過程は人それぞれということです。興味深いのは、若い公西華が年齢が離れた兄弟子と孔子とのやり取りを聞き、その真意を直接孔子に尋ねている点です。この孔子との距離の近さこそ孔子の学び舎の特長だと思います。
「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一20< | >先進第十一22
【原文・白文】
子路問、聞斯行諸。子曰、有父兄在。如之何其聞斯行之。冉有問、聞斯行諸。子曰、聞斯行之。公西華曰、由也問、聞斯行諸。子曰、有父兄在。求也問、聞斯行諸。子曰、聞斯行之。赤也惑。敢問。子曰、求也退。故進之。由也兼人。故退之。
(子路問う、聞くままに斯れ諸を行わんか。子曰わく、父兄の在すこと有り。之を如何ぞ其れ聞くままに斯れ之を行わんや。冉有問う、聞くままに斯れ諸を行わんか。子曰わく、聞くままに斯れ之を行え。公西華曰わく、由や問う、聞くままに斯れ諸を行わんかと。子曰わく、父兄の在すこと有りと。求や問う、聞くままに斯れ諸を行わんかと。子曰わく、聞くままに斯れ之を行えと。赤や惑う。敢て問う。子曰わく、求や退く。故に之を進む。由や人を兼ぬ。故に之を退く。)
【読み下し文】
子路(しろ)問(と)う、聞(き)くままに斯(こ)れ諸(これ)を行(おこな)わんか。子(し)曰(のたま)わく、父兄(ふけい)の在(いま)すこと有(あ)り。之(これ)を如何(いかん)ぞ其(そ)れ聞(き)くままに斯(こ)れ之(これ)を行(おこな)わんや。冉有(ぜんゆう)問(と)う、聞(き)くままに斯(こ)れ諸(これ)を行(おこな)わんか。子(し)曰(のたま)わく、聞(き)くままに斯(こ)れ之(これ)を行(おこな)え。公西華(こうさいか)曰(い)わく、由(ゆう)や問(と)う、聞(き)くままに斯(こ)れ諸(これ)を行(おこな)わんかと。子(し)曰(のたま)わく、父兄(ふけい)の在(いま)すこと有(あ)りと。求(きゅう)や問(と)う、聞(き)くままに斯(こ)れ諸(これ)を行(おこな)わんかと。子(し)曰(のたま)わく、聞(き)くままに斯(こ)れ之を行(おこな)えと。赤(せき)や惑(まど)う。敢(あえ)て問(と)う。子(し)曰(のたま)わく、求(きゅう)や退(しりぞ)く。故(ゆえ)に之(これ)を進(すす)む。由(ゆう)や人(ひと)を兼(か)ぬ。故(ゆえ)に之(これ)を退(しりぞ)く。
「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一20< | >先進第十一22