論語、素読会

季康子盗を患えて、孔子に問う|「論語」顔淵第十二18

季康子が盗賊(が多いの)を思い悩んで、孔子に尋ねられた。孔先生が答えて申し上げた、もしもあなたに欲が無ければ(あなたが無欲であることが伝われば)、(盗みに)褒美を与えたとしても、盗むことはないでしょう。|「論語」顔淵第十二18

【現代に活かす論語】
リーダー自ら私利私欲に走らず利他の精神であれば、部下が規範から外れることはない。

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00:00 章句の検討

06:15「顔淵第十二」後半14 – 24 素読
2023.05.24収録

【解釈】

季康子(きこうし) … 魯の大夫。季氏(季孫氏)の七代目。名は肥(ひ)、贈り名は康(こう)。孔子の門人、冉求、子貢、子路、樊遅らを任用し、冉求の求めで孔子を招いたりもした。「論語」の登場人物|論語、素読会

季康子盗を患えて、孔子に問う。孔子対えて曰わく、苟くも子にして不欲ならば、之を賞すと雖も窃まざらん。|「論語」顔淵第十二18
季康子患盗、問於孔子。孔子対曰、苟子之不欲、雖賞之不窃。

「盗」(とう)は盗賊、物をぬすむ人、ぬすびと。「患」(うれえる)は心配する、思い悩む。「対」(こたえる)は上位者からの質問に答える。「苟」(いやしくも)はもしも…(ならば)。「子」(し)は季康子を指す。「賞」(しょうす)は褒美を与える。「窃」(ぬすむ)はこっそり取る。

季康子が盗賊(が多いの)を思い悩んで、孔子に尋ねられた。孔先生が答えて申し上げた、もしもあなたに欲が無ければ(あなたが無欲であることが伝われば)、(盗みに)褒美を与えたとしても、盗むことはないでしょう。

【解説】

魯の国の大夫である季康子が盗賊存在に悩んで孔子に相談をする場面です。代々魯の国の大夫を担っていた季氏は、私欲に走り悪政を行っていたようです。季康子においてもそれは同様で孔子はこの点について辛辣に指摘しました。まず為政者自らが手本を示せと言っているのです。これに対して季康子がどのように返したかは分かりません。ただ大事なのは季康子の反応ではなく、大夫が君子(人の上に立つ立派なリーダー)であるならば、自ら無欲であるべきだという教えです。
季康子の欲とは例えば重い税です。これによって私腹を肥やしていた季康子。そのために、人民は飢え、盗賊が増えるというのは想像に難くありません。孔子はその点を指摘したのです。
なお、次の章句では、同じ季康子の質問に対して、大夫自らよい行いをすれば人民もそれにつられてよくなると回答しています。季康子に対する孔子の思いがこの二章句に詰まっています。


「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二17< | >顔淵第十二19


【原文・白文】
 季康子患盗、問於孔子。孔子対曰、苟子之不欲、雖賞之不窃。
<季康子患盜、問於孔子。孔子對曰、苟子之不欲、雖賞之不竊。>

(季康子盗を患えて、孔子に問う。孔子対えて曰わく、苟くも子にして不欲ならば、之を賞すと雖も窃まざらん。)
【読み下し文】
 季康子(きこうし)盗(とう)を患(うれ)えて、孔子(こうし)に問(と)う。孔子(こうし)対(こた)えて曰(のたま)わく、苟(いや)くも子(し)にして不欲(ふよく)ならば、之(これ)を賞(しょう)すと雖(いえど)も窃(ぬす)まざらん。


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