孔先生がおっしゃった、正色ではない紫が、正色の朱(の価値)を奪うをにくむ。みだらな鄭の国の音楽が正当な音楽をかき乱すのをにくむ。口が達者で国家をひっくり返す者をにくむ。|「論語」陽貨第十七18
【現代に活かす論語】
口先ばかりの人間が組織をひっくり返していくこと、祭祀の正式な楽曲が品位を損ねていくこと、本来使われることのない色が好まれるようになること、これらは避けられるべきことだろう。
【解釈】
|「論語」陽貨第十七18
子曰、悪紫之奪朱也。悪鄭声之乱雅楽也。悪利口之覆邦家者。
「紫」(むらさき)は青と赤との合成色で正色ではない。間色なので中国では尊ばない。「朱」(しゅ)は混じりけのない深い赤色で、古代の正色。「奪」(うばう)は圧倒する、まさる。「悪」(にくむ)はいやがる。「鄭声」(ていせい)は鄭の国の音楽。みだらな音楽とされた。「雅楽」(ががく)は正当な音楽、天子が天地や祖先を祭るときに用いられる伝統的な音楽。「乱」(みだれる)はかき乱す、秩序をくずす。「利口」(りこう)は口が達者なさま。「邦」(ほう)は国家。「家」(か)は王朝、国家。「覆」(くつがえす)はひっくりかえす。
孔先生がおっしゃった、正色ではない紫が、正色の朱(の価値)を奪うをにくむ。みだらな鄭の国の音楽が正当な音楽をかき乱すのをにくむ。口が達者で国家をひっくり返す者をにくむ。
【解説】
この章句は、文献によって「者」があるものとないものがあります。例えば『論語集解』(古注)では「悪利口之覆邦家」、『論語集注』(新注)では「悪利口之覆邦家者」です。孔子がにくむのは、口が達者な者が国家をひっくり返すのか、口が達者で国家をひっくり返す者をなのか。この章句で孔子が伝えたいことは、正式な色ではないものの評価が高まったり、みだらな音楽が正式な音楽を乱したりすることのように、口が達者な者が国家に携わり、結果として衰退させていくということを問題視しています。慎み深くいることを求めている孔子ならではの章句なのではないかと思います。
こちらのブログでは「者」を含んで解釈していますが、素読は「現代訳 仮名論語」に習って「者」無しで音読しています。
「論語」参考文献|論語、素読会
陽貨第十七17< | >陽貨第十七19
【原文・白文】
子曰、悪紫之奪朱也。悪鄭声之乱雅楽也。悪利口之覆邦家者。
<子曰、惡紫之奪朱也。惡鄭聲之亂雅樂也。惡利口之覆邦家者。>
(子曰わく、紫の朱を奪うのを悪む。鄭声の雅楽を乱るを悪む。利口の邦家を覆す者を悪む。)
【読み下し文】
子(し)曰(のたま)わく、紫(むらさき)の朱(しゅ)を奪(うば)うのを悪(にく)む。鄭声(ていせい)の雅楽(ががく)を乱(みだ)るを悪(にく)む。利口(りこう)の邦家(ほうか)を覆(くつがえ)す者(もの)を悪(にく)む。
「論語」参考文献|論語、素読会
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