哀公が有若に尋ねられた、今年は饑饉で財政が足りないのだが、どうすればいいか。有若が答えて言った、なぜ十分の一の税にしないのですかと。(哀公が)言うには、十分の二の税でさえも私には足りないのに、どうして十分の一にすることができようかと。(有若が)答えて言った、(饑饉にあって)多くの人民が(十分の一の税で)足りるであれば、あなた〔君)はだれと共に足らないと申されるのか。人民が足らずして、あなたはだれとともに足りているというのですか。(人民が足りていれば足りていると思い、人民が足りていなければ足りないと思うのが君主ではありませんか?)|「論語」顔淵第十二09
【現代に活かす論語】
君主、オーナーなどトップに立つ者は、多くの国民、従業員の生活が充分でなければ充分と思わず、生活が充分であれば充分であると思うべきである。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
08:50「顔淵第十二」前半01 – 13 素読
2023.05.09収録
【解釈】
哀公(あいこう) … 魯の君主。名は蔣。十歳で即位した。孔子を重用した定公の後に即位して二十七年在位した。「論語」の登場人物|論語、素読会
有若(ゆうじゃく) … 有子(ゆうし)。姓は有(ゆう)、名は若(じゃく)、字は子有(しゆう)。孔子より十三歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会
哀公有若に問うて曰わく、年饑えて、用足らず。之を如何にせん。有若対えて曰わく、盍ぞ徹せざるや。曰わく、二すら吾猶足らず。之を如何ぞ其れ徹せんや。対えて曰わく、百姓足らば、君孰と与にか足らざらん。百姓足らずんば、君孰と与にか足らん。|「論語」顔淵第十二09
哀公問於有若曰、年饑、用不足。如之何。有若対曰、盍徹乎。曰、二吾猶不足。如之何其徹也。対曰、百姓足、君孰与不足。百姓不足、君孰与足。
「饑」(うえる)は作物がとれないさま。「用」(よう)は資力、もとで。「対」(こたえる)は上位者からの質問に答える。「盍」(なんぞ)はなぜ…しないのか。「徹」(てっす)は徹法のこと。徹法は周代の耕作地に対する税制で収穫の十分の一を税とする。「百姓」(ひゃくせい)は多くの人民。「君」(きみ)は君主、ここでは哀公のこと。
哀公が有若に尋ねられた、今年は饑饉で財政が足りないのだが、どうすればいいか。有若が答えて言った、なぜ十分の一の税にしないのですかと。(哀公が)言うには、十分の二の税でさえも私には足りないのに、どうして十分の一にすることができようかと。(有若が)答えて言った、(饑饉にあって)多くの人民が(十分の一の税で)足りるであれば、あなた〔君)はだれと共に足らないと申されるのか。人民が足らずして、あなたはだれとともに足りているというのですか。(人民が足りていれば足りていると思い、人民が足りていなければ足りないと思うのが君主ではありませんか?)
【解説】
君主がだれと共にあるのか、国の財政はどうあるべきなのかという示唆に富んだ章句です。饑饉という天災にあって、まず民を助けて体力を維持し国力の衰えを防ぐという考え方、二千五百年前に現代にも通じる考え方が存在したことが驚きです。孔子ではなく有子の発言であることにも注目したい章句です。
「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二08< | >顔淵第十二10
【原文・白文】
哀公問於有若曰、年饑、用不足。如之何。有若対曰、盍徹乎。曰、二吾猶不足。如之何其徹也。対曰、百姓足、君孰与不足。百姓不足、君孰与足。
<哀公問於有若曰、年饑、用不足。如之何。有若對曰、盍徹乎。曰、二吾猶不足。如之何其徹也。對曰、百姓足、君孰與不足。百姓不足、君孰與足。>
(哀公有若に問うて曰わく、年饑えて、用足らず。之を如何にせん。有若対えて曰わく、盍ぞ徹せざるや。曰わく、二すら吾猶足らず。之を如何ぞ其れ徹せんや。対えて曰わく、百姓足らば、君孰と与にか足らざらん。百姓足らずんば、君孰と与にか足らん。)
【読み下し文】
哀公(あいこう)有若(ゆうじゃく)に問(と)うて曰(い)わく、年(とし)饑(う)えて、用(よう)足(た)らず。之(これ)を如何(いか)にせん。有若(ゆうじゃく)対(こた)えて曰(い)わく、盍(なん)ぞ徹(てっ)せざるや。曰(い)わく、二(に)すら吾(われ)猶(なお)足(た)らず。之(これ)を如何(いかん)ぞ其(そ)れ徹(てっ)せんや。対(こた)えて曰(い)わく、百姓(ひゃくせい)足(た)らば、君(きみ)孰(たれ)と与(とも)にか足(た)らざらん。百姓(ひゃくせい)足(た)らずんば、君(きみ)孰(たれ)と与(とも)にか足らん。
「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二08< | >顔淵第十二10