論語、素読会

人己を絜くして以て進まば、其の絜きに与せん|「論語」述而第七28

互郷という言葉を交わしづらい土地でのこと。ひとりの子どもが孔先生に会って教えを乞うた。弟子たちは戸惑った。孔先生がおっしゃった、自ら進歩しようとする心には協力する。後退しようとする心は助けない。どうしてお前たちはそのように過度に反応するのだ。ひとが身を清くして向上心を持つのであれば、その向上心に協力する。ただし去ってしまうことの保証はないよ。|「論語」述而第七28

【現代に活かす論語】
向上心を持ったひとにはすすんで手を差し伸べよう。

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00:00 章句の検討

14:40 「述而第七」後半24-37 素読
2021.12.6収録

【解釈】

「互郷」(ごきょう) … どこの場所か不明。

互郷与に言い難し。童子見ゆ。門人惑う。子曰わく、其の進むに与するなり。其の退くには与せざるなり。唯何ぞ甚しきや。人己を絜くして以て進まば、其の絜きに与せん。其の往を保せざるなり。|「論語」述而第七28
互郷難与言。童子見。門人惑。子曰、与其進也。不与其退也。唯何甚。人絜己以進、与其絜也。不保其往也。

「難与言」(ともにいいがたい)は住んでいる人と言葉を交わしづらいの意。「童子」(どうし)は子ども。「見」(まみえる)は孔子に会って教えを乞うようす。「与」(くみする)は助ける、協力する。「進」(すすむ)は進歩する。「退」(しりぞく)は後退する。「甚」(はなはだしい)は過度であるさま。「絜」(いさぎよい)は身を清くする。「往」(おう)は行ってしまうこと。「保」(ほす)は保証する。

互郷という言葉を交わしづらい土地でのこと。ひとりの子どもが孔先生に会って教えを乞うた。弟子たちは戸惑った。孔先生がおっしゃった、自ら進歩しようとする心には協力する。後退しようとする心は助けない。どうしてお前たちはそのように過度に反応するのだ。ひとが身を清くして向上心を持つのであれば、その向上心に協力する。ただし去ってしまうことの保証はないよ。

【解説】

状況を記す記述が少ないので、場面を想像することが難しい章句です。
解釈をする際のポイントとしたのは、「童子見」孔子が子どもと会い言葉を交わしたこと。そしてそれに対して「門人惑」弟子が戸惑ったこと。進歩しようとしている者は助けると伝え、重ねて弟子たちの反応に対して、「人絜己以進」と子どもの潔さを強調して改めてその向上心に応えると宣言していることです。
これは、「入門のお礼(束修)を受け取った以上は、私は未だかつて教え導かないということはなかった。」吾未だ嘗て誨うること無くんばあらず|「論語」述而第七07 にもあるように分け隔てなく教えを乞う者を受け入れたということですが、孔子のおもしろいのは、章句の最後で、弟子たちの杞憂に対して「お前たちの心配もその通り、わたしも分かっているよ」とフォローしているところです。孔子の教学の基本という一面と、人間味を表す興味ある章句です。


「論語」参考文献|論語、素読会
述而第七27< | >述而第七29


【原文・白文】
 互郷難与言。童子見。門人惑。子曰、与其進也。不与其退也。唯何甚。人絜己以進、与其絜也。不保其往也。
<互郷難與言。童子見。門人惑。子曰、與其進也。不與其退也。唯何甚。人絜己以進、與其絜也。不保其往也。>

(互郷与に言い難し。童子見ゆ。門人惑う。子曰わく、其の進むに与するなり。其の退くには与せざるなり。唯何ぞ甚しきや。人己を絜くして以て進まば、其の絜きに与せん。其の往を保せざるなり。)
【読み下し文】
 互郷(ごきょう)与(とも)に言(い)い難(がた)し。童子(どうし)見(まみ)ゆ。門人(もんじん)惑(まど)う。子(し)曰(のたま)わく、其(そ)の進(すす)むに与(くみ)するなり。其(そ)の退(しりぞ)くには与(くみ)せざるなり。唯(ただ)何(なん)ぞ甚(はなはだ)しきや。人(ひと)己(おのれ)を絜(いさぎよ)くして以(もっ)て進(すす)まば、其(そ)の絜(いさぎよ)きに与(くみ)せん。其(そ)の往(おう)を保(ほ)せざるなり。


「論語」参考文献|論語、素読会
述而第七27< | >述而第七29


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