論語、素読会

女奚ぞ曰わざる、其の人と為りや|「論語」述而第七18

葉公が孔先生について子路に尋ねられたが、子路は答えなかった。(それを知った)孔先生がおっしゃった、どうしてお前はこう言わなかったのか。孔の人柄は、学びにおいて分からないことがあるといらだって食事をとることも忘れ、それが分かると楽しくなって心配ごとを忘れてしまう。そして老いがそこまで迫っているのも気付かない人だと。|「論語」述而第七18

【現代に活かす論語】
食事を忘れて学問に没頭し、学問を楽しむあまり心配ごとを忘れ、歳を取ることも忘れている、孔子とはそういう人である。そう言って官職には向かないと断っておいてくれ。彼のような尊大な上司に仕える気はないのだから。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
09:20 「述而第七」前半01-23 素読
2021.11.17収録

【解釈】

葉公(しょうこう) … 姓は沈(ちん)、名は諸梁(しょりょう)、字は子高(しこう)。楚の国の重臣で葉(しょう)地方の長官。自分で「公」を僭称していた。賢明な政治家だったが、孔子をあまり尊敬していなかったらしい。

子路(しろ) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。「論語」の登場人物|論語、素読会

葉公孔子を子路に問う。子路対えず。子曰わく、女奚ぞ曰わざる、其の人と為りや。憤を発しては食を忘れ、楽しんでは以て憂を忘れ、老の将に至らんとするを知らざるのみと。|「論語」述而第七18
葉公問孔子於子路。子路不対。子曰、女奚不曰、其為人也、発憤忘食、楽以忘憂。不知老之将至云爾。

「対」(こたえる)は答える。「女」(なんじ)はあなた、お前。「奚」(なんぞ)は「何」と同じ、どうしてという反語。「為人」(ひととなり)は人柄。「発憤」(ふんをはっして)は、得られないことにいらだつ。「憂」(うれい)は心配ごと。

葉公が孔先生について子路に尋ねられたが、子路は答えなかった。(それを知った)孔先生がおっしゃった、どうしてお前はこう言わなかったのか。孔の人柄は、学びにおいて分からないことがあるといらだって食事をとることも忘れ、それが分かると楽しくなって心配ごとを忘れてしまう。そして老いがそこまで迫っているのも気付かない人だと。

【解説】

葉公が登場する章句を紹介します。「葉公が政治について尋ねた。孔先生がおっしゃった、領内の者が心からうれしく思えば、遠方からも領内にやってくるようになります。|「論語」子路第十三16」「葉公が孔子に話して言うには、私の村に正しい行いを信条とするものがいます。その父親が羊を盗んだので、その子はこれを明らかにしましたと。孔先生がおっしゃった、私の村の性格が素直な者は、少し違います。父は子のために隠し、子は父のために隠します。素直な行いはその中にありますと。|「論語」子路第十三18
任侠心に熱い子路が尊敬する師について聞かれて答えなかった理由は、いろいろ推察されます。孔子がこのことを知って弟子たちに伝えた言葉は、自分のことを謙遜しつつ、葉公に対して任官の意思がないことを明確にしています。この孔子のことばには、子路の気持ちに対する配慮や、皮肉、ユーモアを感じるので、孔子と弟子との関係を語る上で大変好きな章句です。


「論語」参考文献|論語、素読会
述而第七17< | >述而第七19


【原文・白文】
 葉公問孔子於子路。子路不対。子曰、女奚不曰、其為人也、発憤忘食、楽以忘憂。不知老之将至云爾。
<葉公問孔子於子路。子路不對。子曰、女奚不曰、其爲人也、發憤忘食、樂以忘憂。不知老之將至云爾。>

(葉公孔子を子路に問う。子路対えず。子曰わく、女奚ぞ曰わざる、其の人と為りや。憤を発しては食を忘れ、楽しんでは以て憂を忘れ、老の将に至らんとするを知らざるのみと。)
【読み下し文】
 葉公(しょうこう)孔子(こうし)を子路(しろ)に問(と)う。子路(しろ)対(こた)えず。子(し)曰(のたま)わく、女(なんじ)奚(なん)ぞ曰(い)わざる、其(そ)の人(ひと)と為(な)りや。憤(ふん)を発(はっ)しては食(しょく)を忘(わす)れ、楽(たの)しんでは以(もっ)て憂(うれい)を忘(わす)れ、老(おい)の将(まさ)に至(いた)らんとするを知(し)らざるのみと。
※「云爾」は(しかいうと)とも(のみと)とも読み下す。


「論語」参考文献|論語、素読会
述而第七17< | >述而第七19


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