論語、素読会

善く我が為に辞せよ|「論語」雍也第六07

季孫氏が閔子騫を斉の国の代官にしようとした。閔子騫はその使者に言った。どうぞ丁寧に私のためにお断りしてください。もしまた再び(代官にしようとして)いらっしゃるのであれば、私は斉の国の汶のほとりに隠れるでしょう。|「論語」雍也第六07

【現代に活かす論語】
無理をして非礼なリーダーの元で働くことはない。自分の判断によって断ることも大切なのだ。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
09:55 「雍也第六」前半01-10 素読
2021.9.2収録

【解釈】

季氏(きし) … 季孫氏。魯の大夫、三桓(孟孫氏、叔孫氏、季孫氏)のひとつ。魯の襄公のころから大臣職を独占し、襄公を無視して権力を欲しいままにした。「論語」の登場人物|論語、素読会

閔子騫(びんしけん) … 姓は閔、名は損(そん)、字は子騫。孔子より15歳若い。

費(ひ) … 季氏の領地。季氏が魯公を無視して民を苦しめたので、費の代官が度々背いた。

汶(ぶん) … 魯の北方、斉の国との国境を流れる川。

季氏閔子騫をして費の宰たらしめんとす。閔子騫曰わく、善く我が為に辞せよ。如し我を復する者あらば、則ち吾は必ず汶の上に在らん。|「論語」雍也第六07
季氏使閔子騫為費宰。閔子騫曰、善為我辞焉。如有復我者、則吾必在汶上矣。

「使為費宰」(ひのさいたらしめんとす)は、費という国の代官にしようとした。「善為我辞焉」(善く我の為に辞せよ)は、どうぞ丁寧に私のためにお断りしてください。「如」(もし)はもしも。「復」(また)はくり返し。汶上(ぶんのほとり)は汶水の流域、斉の国のことを指す。

季孫氏が閔子騫を斉の国の代官にしようとした。閔子騫はその使者に言った。どうぞ丁寧に私のためにお断りしてください。もしまた再び(代官にしようとして)いらっしゃるのであれば、私は斉の国の汶のほとりに隠れるでしょう。

【解説】

季孫氏を含む魯の大夫の三桓(さんかん)は魯公(魯の王)を無視したり追い出したりして、民を苦しめました。孔子も度々そうした行いを非難していました。冉有や季路(子路)は季孫氏の宰(代官)として仕えて、季孫氏を正そうとしましたが効果を挙げるには至らなかったようです。子冉有に謂いて曰わく、女救うこと能わざるか|「論語」八佾第三06 そうした背景もあって、季孫氏に仕えるかどうかは個々の弟子の考え方に任せていたのです。


「論語」参考文献|論語、素読会
雍也第六06< | >雍也第六08


【原文・白文】
 季氏使閔子騫為費宰。閔子騫曰、善為我辞焉。如有復我者、則吾必在汶上矣。
<季氏使閔子騫爲費宰。閔子騫曰、善爲我辭焉。如有復我者、則吾必在汶上矣。>

(季氏閔子騫をして費の宰たらしめんとす。閔子騫曰わく、善く我が為に辞せよ。如し我を復する者あらば、則ち吾は必ず汶の上に在らん。)
【読み下し文】
 季氏(きし)閔子騫(びんしけん)をして費(ひ)の宰(さい)たらしめんとす。閔子騫(びんしけん)曰(い)わく、善(よ)く我(わ)が為(ため)に辞(じ)せよ。如(も)し我(われ)を復(また)する者(もの)あらば、則(すなわ)ち吾(われ)は必(かなら)ず汶(ぶん)の上(ほとり)に在(あ)らん。


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雍也第六06< | >雍也第六08


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