論語、素読会

冢宰に聴くこと三年|「論語」憲問第十四42

子張が言う、書経には、殷の中興の王・髙宗は父母の喪に服している三年間はことばを発しなかったとありますが、どういう意味でしょうか。孔先生がおっしゃった、どうして必ずしも高宗だけだろうか。昔のひとはみなそのようであった。君主が亡くなれば、官僚をすべてまとめて、王を補佐する役割の冢宰に指示を受けて三年間過ごしたのであると。(君主は喪の三年間、ことばを発する必要がないのである。)|「論語」憲問第十四42

【現代に活かす論語】
組織のトップ、リーダーが礼節・規範に従って行動していれば、例え彼の直接の指示でなく、彼が指名した代行者の指示であれば、部下は従うのです。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

09:25「憲問第十四」後半22 – 46 素読
2024.2.8収録

【解釈】

子張(しちょう) … 姓は顓孫(せんそん)、名は師(し)、字は子張(しちょう)。孔子より四十八歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会

子張曰わく、書に云う、高宗諒陰三年言わずとは。何の謂ぞや。子曰わく、何ぞ必ずしも高宗のみならんや。古の人皆然り。君薨ずれば、百官己を総べて、以て冢宰に聴くこと三年。|「論語」憲問第十四42
子張曰、書云、高宗諒陰三年不言。何謂也。子曰、何必高宗。古之人皆然。君薨、百官総己、以聴於冢宰三年。

「書」(しょ)は書経のこと。「高宗」(こうそう)は殷の中興の王。「諒陰」(りょうあん)は天子がが父母の喪に服する部屋。「言」(いう)はことばを発する、話す。「古」(いにしえ)は遠い昔。「然」(しかり)はそのようであること。「薨」(こう)は高位の者が死ぬ。みまかる。「百官」(ひゃっかん)は公卿以下の多くの官僚。「総」(すべて)はみな、まったく、すべて。「冢宰」(ちょうさい)は官名、周代、天官の長で王を補佐した。「聴」(きく)は勧告や意見に従う、受け入れる。

子張が言う、書経には、殷の中興の王・髙宗は父母の喪に服している三年間はことばを発しなかったとありますが、どういう意味でしょうか。孔先生がおっしゃった、どうして必ずしも高宗だけだろうか。昔のひとはみなそのようであった。君主が亡くなれば、官僚をすべてまとめて、王を補佐する役割の冢宰に指示を受けて三年間過ごしたのであると。(君主は喪の三年間、ことばを発する必要がないのである。)

【解説】

古代中国の喪の礼は厳格でした。この章句の冒頭、三年間話しをしないというのは、文献によれば、自ら指示を告げないが報告を聞くことはあったということのようです。実際の差配は君主を補佐する「冢宰」という役目の者が執り行っていたそうです。
子張がこの喪の期間中の君主の態度について孔子に尋ねたのは、三年もの間、話をしないことで政治的な空白を生んでしまう状況を疑問視したのでしょう。対して孔子は組織とその人員の能力によって解決可能と考えていました。また、弟子の中でも三年という期間が長いと感じる風潮があったようです。喪の期間について三年間を守るようにと孔子が伝える章句が論語に収められています。「子曰わく、父在せば其の志を観、父没すれば其の行を観る。三年父の道を改むる無くんば、孝と謂う可し。|「論語」学而第一11」「子曰わく、三年父の道を改むる無きは、孝と謂う可し。|「論語」里仁第四20」 孔子は家庭と政治が同じである、家庭を治めてこそと考えていますので、この章句はそのまま政治の世界にも適用されると考えるべきです。

この章句は次の章句と併せて楽しむことをお勧めします。
子曰わく、上礼を好めば、則ち民使い易きなり。|「論語」憲問第十四43」
この二つの章句は、ひとつの章句として解釈すべきではないかと考えます。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四41< | >憲問第十四43


【原文・白文】
 子張曰、書云、高宗諒陰三年不言。何謂也。子曰、何必高宗。古之人皆然。君薨、百官総己、以聴於冢宰三年。
<子張曰、書云、高宗諒陰三年不言。何謂也。子曰、何必高宗。古之人皆然。君薨、百官總己、以聽於冢宰三年。>

(子張曰わく、書に云う、高宗諒陰三年言わずとは。何の謂ぞや。子曰わく、何ぞ必ずしも高宗のみならんや。古の人皆然り。君薨ずれば、百官己を総べて、以て冢宰に聴くこと三年。)
【読み下し文】
 子張(しちょう)曰(い)わく、書(しょ)に云(い)う、高宗(こうそう)諒陰(りょうあん)三年(さんねん)言(い)わずとは。何(なん)の謂(いい)ぞや。子(し)曰(のたま)わく、何(なん)ぞ必(かなら)ずしも高宗(こうそう)のみならんや。古(いにしえ)の人(ひと)皆(みな)然(しか)り。君(きみ)薨(こう)ずれば、百官(ひゃっかん)己(おのれ)を総(す)べて、以(もっ)て冢宰(ちょうさい)に聴(き)くこと三年(さんねん)なり。


「論語」参考文献|論語、素読会
憲問第十四41< | >憲問第十四43


※Kindle版