論語、素読会

君子道に貴ぶ所の者三|「論語」泰伯第八04

【原文】
 曾子有疾。孟敬子問之。曾子言曰、鳥之将死、其鳴也哀。人之将死、其言也善。君子所貴乎道者三。動容貌、斯遠暴慢矣、正顏色、斯近信矣、出辞気、斯遠鄙倍矣、籩豆之事、則有司存。
<曾子有疾。孟敬子問之。曾子言曰、鳥之將死、其鳴也哀。人之將死、其言也善。君子所貴乎道者三。動容貌、斯遠暴慢矣、正顏色、斯近信矣、出辭氣、斯遠鄙倍矣、籩豆之事、則有司存。>

(曾子疾有り。孟敬子之を問う。曾子言いて曰わく、鳥の将に死なんとするとき、其の鳴くや哀し。人の将に死なんとするとき、其の言うや善し。君子道に貴ぶ所の者三。容貌を動かして、斯に暴慢に遠ざかり、顏色を正しくして、斯に信に近づき、辞気を出して、斯に鄙倍に遠ざかる、籩豆の事は、有司存す。)
【読み下し文】
 曾子(そうし)疾(しつ)有(あ)り。孟敬子(もうけいし)之(これ)を問(と)う。曾子(そうし)言(い)いて曰(い)わく、鳥(とり)の将(まさ)に死(し)なんとするとき、其(そ)の鳴(な)くや哀(かな)し。人(ひと)の将(まさ)に死(し)なんとするとき、其(そ)の言(い)うや善(よ)し。君子(くんし)道(みち)に貴(たっと)ぶ所(ところ)の者(もの)三(みつ)。容貌(ようぼう)を動(うご)かして、斯(ここ)に暴慢(ぼうまん)に遠(とお)ざかり、顏色(がんしょく)を正(ただ)しくして、斯(ここ)に信(しん)に近(ちか)づき、辞気(じき)を出(いだ)して、斯(ここ)に鄙倍(ひばい)に遠(とお)ざかる、籩豆(へんとう)の事(こと)は、有司(ゆうし)存(そん)す。


曾子(そうし) … 姓は曾、名は参(しん)、字は子輿(しよ)。孔子より46歳若い。孔子の教えを伝えた第一人者と言われています。

孟敬子(もうけいし) … 魯の大夫。名は捷(しょう)、字は儀(ぎ)。敬子(けいし)は贈り名。孟武伯(もうぶはく)の子。

【解釈】

曾子有疾。孟敬子問之。曾子言曰、鳥之将死、其鳴也哀。人之将死、其言也善。君子所貴乎道者三。

「疾」(しつ)は病気。「君子」(くんし)は人の上に立つ立派な人。「貴」(たっとぶ)は重視する。「道」(みち)は道理。『道』とは?|論語、素読会
曾子が病気で危篤になった時、孟敬子が見舞いに行った。曾子が言われた、「鳥がまさに死ぬ前には、哀しげな声で鳴く。人がまさに死ぬ前には、善いことを言う。」というが、人の上に立つ立派な人が重視する道理が3つある。

動容貌、斯遠暴慢矣、正顏色、斯近信矣、出辞気、斯遠鄙倍矣、籩豆之事、則有司存。

「信」(しん)は誠実さ。『信』とは?|論語、素読会 「辞気」(じき)は話しぶり。「出」(いだす)は納める。「鄙倍」(ひばい)は見識が狭く道理に背くさま。「籩豆」(へんとう)は祭祀や宴会などのとき食物を盛る器。「有司」(ゆうし)はかかりの役人。
第一に立ち居降る舞いは荒っぽさから遠ざかり、第二に表情を正して誠実さに近づく。第三に話しぶりを納めれば、見識が狭く道理に背くようなことから遠ざかる。祭祀での器のことなどは、係の役人がいる(のでまかせるといい)。


【解説】

真面目な曾子が見舞いに来た魯の大夫に君子の道理について語った場面です。わざわざ見舞いに訪れ、また曾子が君子の道を説いている様子から、曾子と師弟関係にあったと考えることができます。
三つの道理を韻を踏んで紹介しているところは、リズムが出て耳馴染みがよく印象深い言葉になっているのでしょう。
章句の最後に係の役人に任せるようにと締めくくっていることから想像してみます。祭祀や宴会など国の大切な行事に際して、横柄に指示したり、喜怒哀楽をすぐ顔に出したり、口から出任せにわがままを言うような態度を戒め、係の者を信頼して堂々とするようにアドバイスしているのではないでしょうか。ひょっとするとこの祭祀とは曾子自身の葬儀について指示したのかも知れません。
臨終に際して大変冷静で沈着な曾子の人物像をうかがうことができる章句です。


「論語」参考文献|論語、素読会
泰伯第八03< | >泰伯第八05


【現代に活かす論語】
リーダーが目指すべき3つの姿がある。立ち居振る舞いは荒っぽくなく、誠実な人柄が表情に表れ、話しぶりは礼儀正しく道理に背く人を近づけることがない。