論語、素読会

未だ善からざるなり|「論語」衛霊公第十五33

孔先生がおっしゃった、知識は地位に及んでいるが、徳性を高めることで地位を守ることができなければ、たとえ地位を得たとしても必ずその地位を失う。知識が地位に及び、徳性を高めることでその地位を守ったとしても、威厳をもってその地位に臨まなければ、人民は尊敬しない。知識が地位に及び、徳性を高めることで地位を守り、威厳をもってその地位に臨めたとしても、人民を動かすのに礼節をもって行わなければ、まだ善い(政治)とは言えない。|「論語」衛霊公第十五33

【現代に活かす論語】
そのひとの地位に合った知識があり、徳政を行い、威厳をもって臨まなければ、部下は尊敬しない。そして、部下を動かすのに礼節をもって行わなければ、善い組織とは言えない。

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00:00 章句の検討

11:00「衛霊公第十五」後半23 – 42素読
2024.6.27収録

【解釈】

子曰わく、知は之に及べども、仁之を守ること能わざれば、之を得ると雖も、必ず之を失う。知は之に及び、仁能く之を守れども、荘以て之に涖まざれば、則ち民敬せず。知は之に及び、仁能く之を守り、荘以て之に涖めども、之を動かすに礼を以てせざれば、未だ善からざるなり。|「論語」衛霊公第十五33
子曰、知及之、仁不能守之、雖得之、必失之。知及之、仁能守之、不荘以涖之、則民不敬。知及之、仁能守之、荘以涖之、動之不以礼、未善也。

「知」(ち)は知識。『知』とは?|論語、素読会 「仁」(じん)は徳に基づいて行われる政治、心の徳を重ね徳性を高めること。『仁』とは?|論語、素読会 「能」(あたう)は…できる、…しうる、…られる。「荘」(そう)は厳粛なさま。「涖」(のぞむ)は場に至る、統治する、つかさどる。「則」(すなわち)は…ならば。「礼」(れい)は広く礼儀や礼節、古くからこうあるべきとされている大切なもの。『礼』とは?|論語、素読会 「未」(いまだ…ず)はまだ…していない。「善」(よく)は有徳なさま。

孔先生がおっしゃった、知識は地位に及んでいるが、徳性を高めることで地位を守ることができなければ、たとえ地位を得たとしても必ずその地位を失う。知識が地位に及び、徳性を高めることでその地位を守ったとしても、威厳をもってその地位に臨まなければ、人民は尊敬しない。知識が地位に及び、徳性を高めることで地位を守り、威厳をもってその地位に臨めたとしても、人民を動かすのに礼節をもって行わなければ、まだ善い(政治)とは言えない。

【解説】

「之」は何を指すのでしょうか。章句の中に「民」とあるので、為政者について孔子が語っていることが推測されます。前半では文献による「位・地位」として解釈を進めますが、最後の「動之不以礼」の「之」は人民を指すと解釈します。
徳政に加えて礼節が大切であるという点は、次の章句でも唱えています。「之を道くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥ずる有りて且つ格し。|「論語」為政第二03
また、威厳をもって人民に相対すれば尊敬されるという点は、こちらの章句でも紹介されています。「之に臨むに荘を以てすれば則ち敬す|「論語」為政第二20


「論語」参考文献|論語、素読会
衛霊公第十五32< | >衛霊公第十五34


【原文・白文】
 子曰、知及之、仁不能守之、雖得之、必失之。知及之、仁能守之、不荘以涖之、則民不敬。知及之、仁能守之、荘以涖之、動之不以礼、未善也。
<子曰、知及之、仁不能守之、雖得之、必失之。知及之、仁能守之、不莊以涖之、則民不敬。知及之、仁能守之、莊以涖之、動之不以禮、未善也。>

(子曰わく、知は之に及べども、仁之を守ること能わざれば、之を得ると雖も、必ず之を失う。知は之に及び、仁能く之を守れども、荘以て之に涖まざれば、則ち民敬せず。知は之に及び、仁能く之を守り、荘以て之に涖めども、之を動かすに礼を以てせざれば、未だ善からざるなり。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、知(ち)は之(これ)に及(およ)べども、仁(じん)之(これ)を守(まも)ること能(あた)わざれば、之(これ)を得(え)ると雖(いえど)も、必(かなら)ず之(これ)を失(うしな)う。知(ち)は之(これ)に及(およ)び、仁(じん)能(よ)く之(これ)を守(まも)れども、荘(そう)以(もっ)て之(これ)に涖(のぞ)まざれば、則(すなわ)ち民(たみ)敬(けい)せず。知(ち)は之(これ)に及(およ)び、仁(じん)能(よ)く之(これ)を守(まも)り、荘(そう)以(もっ)て之(これ)に涖(のぞ)めども、之(これ)を動(うご)かすに礼(れい)を以(もっ)てせざれば、未(いま)だ善(よ)からざるなり。


「論語」参考文献|論語、素読会
衛霊公第十五32< | >衛霊公第十五34


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