子貢が言うには、紂王の悪事はそれほどひどいものではなかった。これによって君子・人の上に立つ立派な人は(評価が)低い方に居ることをいやがった。天下の悪事がすべて紂王に集まったのである、と。|「論語」子張第十九20
【現代に活かす論語】
一度悪いことをして評判が立ってしまうと、尾ひれがついて、様々な悪事があたかも自分がやったことのようになってしまいます。人の上に立つ立派なリーダーは、そのようなことを避けるのです。
【解釈】
子貢(しこう) … 賜(し)。姓は端木(たんぼく)、名は賜(し)、字は子貢(しこう)。孔子より三十一歳若い。「論語」の中で孔子との問答がもっとも多い。「論語」の登場人物|論語、素読会
紂(ちゅう) … 紂王(ちゅうおう)。名は辛(しん)、また受(じゅ)。紂は、呼び名、また贈り名。殷(いん)の第三十一代、最後の王。弁説に優れ、行動は敏捷、力が強かった。「論語」の登場人物|論語、素読会
子貢曰わく、紂の不善や、是くの如く之れ甚だしからざるなり。是を以て君子は下流に居ることを悪む。天下の悪皆焉に帰す。|「論語」子張第十九20
子貢曰、紂之不善、不如是之甚也。是以君子悪居下流。天下之悪皆帰焉。
「善」(ぜん)はよいこと、高く評価されるもの。「如是」(かくのごとく)はこのように。「甚」(はなはだしい)は過度であるさま、ひどい。「君子」(くんし)は徳の高いりっぱな人物、人の上に立つ立派な人、リーダー。「下流」(かりゅう)は川しも、低い方に流れる。「悪」(にくむ)はいやがる。「悪」(あく)は悪事、罪亜。「焉」(ここ)は動作や行為のなされる場所を表す。「帰」(きす)はあるべき所に集まる。
子貢が言うには、紂王の悪事はそれほどひどいものではなかった。これによって君子・人の上に立つ立派な人は(評価が)低い方に居ることをいやがった。天下の悪事がすべて紂王に集まったのである、と。
【解説】
「酒池肉林」の故事で知られる殷代の紂王は、夏代の桀王と並んで暴君の代表として居られています。しかし、子貢は彼の悪事が実はそれほどではなかったと言います。その上で、悪い評価が立つと、尾ひれがついて様々な悪事を行ったかのように噂されるので、君子・人の上に立つ立派な人物は、悪事を行わず、評判になることをいやがったと伝えています。
「論語」参考文献|論語、素読会
子張第十九19< | >子張第十九21
【原文・白文】
子貢曰、紂之不善、不如是之甚也。是以君子悪居下流。天下之悪皆帰焉。
<子貢曰、紂之不善、不如是之甚也。是以君子惡居下流。天下之惡皆歸焉。>
(子貢曰わく、紂の不善や、是くの如く之れ甚だしからざるなり。是を以て君子は下流に居ることを悪む。天下の悪皆焉に帰す。)
【読み下し文】
子貢(しこう)曰(い)わく、紂(ちゅう)の不善(ふぜん)や、是(か)くの如(ごと)く之(こ)れ甚(はなは)だしからざるなり。是(ここ)を以(もっ)て君子(くんし)は下流(かりゅう)に居(お)ることを悪(にく)む。天下(てんか)の悪(あく)皆(みな)焉(ここ)に帰(き)す。
「論語」参考文献|論語、素読会
子張第十九19< | >子張第十九21


