論語、素読会

人能く道を弘む。道人を弘むるに非らず|「論語」衛霊公第十五29

孔先生がおっしゃった、ひとが「道」道理や規律を広めるのであって、「道」道理や規律がひとを広める(人間性を豊かにする)のではない。|「論語」衛霊公第十五29

【現代に活かす論語】
「道」がひとを豊かにするのではありません。ひとが「道」を耕し広めていくのです。

規律がひとを豊かにするのではありません。ひとが道理や規律を広めていくのです。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

06:05「衛霊公第十五」後半23 – 43素読
2024.6.17収録

【解釈】

子曰わく、人能く道を弘む。道人を弘むるに非らず。|「論語」衛霊公第十五29
子曰、人能弘道。非道弘人。

「能」(よく)は必然性を表す、…しなければならない、…することになる。「道」(みち)は道義、道理、規律。『道』とは?|論語、素読会 「弘」(ひろむ)は拡充する、広大にする。

孔先生がおっしゃった、ひとが「道」道理や規律を広めるのであって、「道」道理や規律がひとを広める(人間性を豊かにする)のではない。

【解説】

この章句は、大変抽象的です。ひとに説明すること、言語化することが難しいと感じます。いくつか挑戦してみます。

まず、眼前に続く「道」を想像してください。その「道」はだれかがあなたのために用意したものでしょうか。その「道」はあなたを豊かにする(広める)ものでしょうか。自分自身が「道」を耕して(広めて)いくのが必然である、そう孔子は言います。
「道」はひとが選び、形作るものであって、「道」に対して受け身であっては自己は広まらない、発達しないと考えてもいいでしょう。

このブログでは「道」を道義、道理、規律と解釈しましたが、論語でいう「道」にはひとが生まれながらにして徳性を高めること、という意味があることを忘れてはなりません。ひとが必然的に道義や道理という普遍的なもの広めると同時に、徳を積むことを広める(深める)と考えるべきでしょう。
では、この章句で否定されている「道」がひとを広めるとはどういうことなのでしょうか。規律が人間性を豊かにする。と解釈しました。規律が人間性を豊かにすることはない、そう解釈することも可能だと考えます。

なお、この章句の「弘道」は、旧水戸藩の藩校「弘道館」の命名に影響を与えたと思われます。


「論語」参考文献|論語、素読会
衛霊公第十五28< | >衛霊公第十五30


【原文・白文】
 子曰、人能弘道。非道弘人。

(子曰わく、人能く道を弘む。道人を弘むるに非らず。)
【読み下し文】
 子(し)曰(のたま)わく、人(ひと)能(よ)く道(みち)を弘(ひろ)む。道(みち)人(ひと)を弘(ひろ)むるに非(あら)らず。


「論語」参考文献|論語、素読会
衛霊公第十五28< | >衛霊公第十五30


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