季氏は魯の君主より裕福である。そこへ求が季氏のために重税をきびしく取り立てて更に増やした。孔先生がおっしゃった、(彼は)私の弟子ではない。諸君、たいこを鳴らして彼を責めてもよかろう。|「論語」先進第十一16
【現代に活かす論語】
道徳を逸した行為を行ったひとには、徳を学ぶ仲間として心に響くように咎めてもよいでしょう。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
08:30「先進第十一」前半1 – 16 素読
2023.02.13収録
【解釈】
季氏(きし) … 季孫氏(きそんし)。魯の大夫、三桓(孟孫氏、叔孫氏、季孫氏)のひとつ。魯の襄公のころから大臣職を独占し、襄公を無視して権力を欲しいままにした。 「論語」の登場人物|論語、素読会
周公(しゅうこう) … 周公旦。名は旦(たん)。周の文王の子、武王の弟。武王の子の成王を補佐して、制度や儀式・礼楽などを定めたが自らは天子の位に即こうとしなかった。魯の国の始祖。孔子の理想とする人物。 「論語」の登場人物|論語、素読会
※この章句では、魯公(魯の君主)のこと。
求(きゅう) … 冉有(ぜんゆう)冉求(ぜんきゅう)。姓は冉(ぜん)、名は求(きゅう)また有(ゆう)。字は子有(しゆう)。孔子より29歳若い。 「論語」の登場人物|論語、素読会
季氏、周公より富めり。而して求や之が為に聚斂して之を附益す。子曰わく、吾が徒に非ざるなり。小子鼓を鳴らして之を攻めて可なり。|「論語」先進第十一16
季氏富於周公。而求也為之聚斂而附益之。子曰、非吾徒也。小子鳴鼓而攻之可也。
「而」(しこうして)はそして。「聚斂」(しゅうれん)は重税を課してきびしく取り立てる。「附益」(ふえき)はつけ加えてふやす。「徒」(と)は先生に従って学問や技芸を学んでいる門人、弟子。「小子」(しょうし)は目上の者や師が後輩を呼ぶ語。「鼓」(こ)は打楽器の一種、たいこ。「攻」(せめる)はとがめる、責める。「可」(か)は同意である、ゆるす。
季氏は魯の君主より裕福である。そこへ求が季氏のために重税をきびしく取り立てて更に増やした。孔先生がおっしゃった、(彼は)私の弟子ではない。諸君、たいこを鳴らして彼を責めてもよかろう。
【解説】
季氏は魯の国の大夫(大臣)であったが、政治を牛耳ってその富を我が物にしていたようです。冉有はこの季氏に任官していましたが、季氏の暴政を止めることができずにかえって増やしてしまいました。このことを弟子たちの前で話すと、さらに、冉有を弟子として認めない、太鼓を鳴らすように責めてもよろしいとまで、厳しく非難している章句です。
文献では、章句の前半で冉求のことを「求」と親しげに読んでいることから、孔子のことばであるといいます。この意見に賛同します。文頭で「子曰わく」とせずに、冉有の行いを説明した後に、「子曰わく」としている工夫に、編者のセンスを感じます。孔子はここで語気を荒げるなど声色を変えて力強く語ったのが伝わってくるようです。
なぜ太鼓を鳴らして責めるのか。という点ですが、第一に祭祀などに使う楽器であること。心に響くという効果があるかも知れません。そして言葉ではなく、まず太鼓を使うという点。太鼓を鳴らすようにしてという比喩かも知れませんが、実際に太鼓を鳴らすことで、冉有に対する伝わり方も変わってくるように思います。いずれにしても孔子らしい表現のように感じます。
「論語」参考文献|論語、素読会
先進第十一15< | >先進第十一17
【原文・白文】
季氏富於周公。而求也為之聚斂而附益之。子曰、非吾徒也。小子鳴鼓而攻之可也。
<季氏富於周公。而求也爲之聚斂而附益之。子曰、非吾徒也。小子鳴鼓而攻之可也。>
(季氏、周公より富めり。而して求や之が為に聚斂して之を附益す。子曰わく、吾が徒に非ざるなり。小子鼓を鳴らして之を攻めて可なり。)
【読み下し文】
季氏(きし)、周公(しゅうこう)より富(と)めり。而(しこう)して求(きゅう)や之(これ)が為(ため)に聚斂(しゅうれん)して之(これ)を附益(ふえき)す。子(し)曰(のたま)わく、吾(わ)が徒(と)に非(あら)ざるなり。小子(しょうし)鼓(こ)を鳴(な)らして之(これ)を攻(せ)めて可(か)なり。
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