論語、素読会

必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて成さん者なり|「論語」述而第七10

【原文】
 子謂顏淵曰、用之則行、舍之則蔵。唯我与爾有是夫。子路曰、子行三軍則誰与。子曰、暴虎馮河、死而無悔者、吾不与也。必也臨事而懼、好謀而成者也。
<子謂顏淵曰、用之則行、舍之則藏。唯我與爾有是夫。子路曰、子行三軍則誰與。子曰、暴虎馮河、死而無悔者、吾不與也。必也臨事而懼、好謀而成者也。>

(子顏淵に謂いて曰わく、之を用うれば則ち行い、之を舍つれば則ち藏る。唯我と爾と是れ有るかな。子路曰わく、子三軍を行らば則ち誰と与にせん。子曰わく、暴虎馮河、死して悔なき者は、吾与にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて成さん者なり。)
【読み下し文】
 子(し)顏淵(がんえん)に謂(い)いて曰(のたま)わく、之(これ)を用(もち)うれば則(すなわ)ち行(おこな)い、之(これ)を舍(す)つれば則(すなわ)ち蔵(かく)る。唯(ただ)我(われ)と爾(なんじ)と是(こ)れ有(あ)るかな。子路(しろ)曰(い)わく、子(し)三軍(さんぐん)を行(や)らば則(すなわ)ち誰(たれ)と与(とも)にせん。子(し)曰(のたま)わく、暴虎(ぼうこ)馮河(ひょうが)、死(し)して悔(くい)なき者(もの)は、吾(われ)与(とも)にせざるなり。必(かなら)ずや事(こと)に臨(のぞ)みて懼(おそ)れ、謀(はかりごと)を好(この)みて成(な)さん者(もの)なり。
※好(この)みて、とも、好(よく)して、とも読み下す。


顔淵(がんえん)回(かい) … 姓は顔、名は回、字は子淵(しえん)。孔子より30歳若い。孔子よりも早く、30歳(一説では40歳とも)で死んだ。秀才で、門人の中で一番の学問好き。孔子の第一の弟子ともいわれる。
もの静かだが孔子の教えを充分に実践しており、一を聞いて十を知る孔子もかなわない部分を持つ秀才。

子路(しろ) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路・季路。孔子より9歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。

三軍(さんぐん) … 一軍は12,500人で、三軍とは大国が準備できる大軍のこと。

【解釈】

子謂顏淵曰、用之則行、舍之則藏。唯我与爾有是夫。

「用」(もちうる)は任用する。「舍」(すつる)は停止する、やめる。「蔵」(かくる)はかくれる、世間からかくれる。「夫」(かな)文末に置き、詠嘆を表す。
孔先生が顔淵におっしゃった、任用されれば政治を正しく行い、退任すれば世の中からかくれる。ただこのように行えるのは私とお前くらいかなぁ。

子路曰、子行三軍則誰与。

「子」(し)は先生、孔子のこと。
子路が言った、もし先生が大軍を動かす場合は誰と行いますか? 

子曰、暴虎馮河、死而無悔者、吾不与也。必也臨事而懼、好謀而成者也。

「暴虎」(ぼうこ)は虎を素手で打つこと。「馮河」(りょうが)馮は凌。黄河のような大川を凌いで渡ること。「懼」(おそれ)はおそれる、慎重になる。「謀」(はかりごと)は計画。
孔先生がおっしゃった、虎に素手で挑み大河を歩いて渡ろうとするような死んでも後悔しないような者とは私は行動を共にしない。(行動を共にするとすれば、)必ず(軍の)事に臨むときは慎重にして、計画を充分に行って成功させる者とだなぁ。


【解説】

孔子と顔淵が、国に任用された場合、退任する場合の話をしています。つまり、出処進退について、孔子の処世術を理解している顔淵のことを章句の前半では褒めています。
それを聞いていた子路が表す、自分が得意とする軍事面を引き合いに出して自分のことも認めて欲しいという軽い嫉妬心を、章句の後半でたしなめています。
この章句は、顔淵のことを認めるとともに、子路に対する愛情を感じる章句です。

子路に対しては、もし孔子が大海原に漕ぎ出すように現世から逃れる場合に、一緒に付いてきてくれるのは子路くらいだと伝えているほどの信頼関係があります。我に従わん者は其れ由なるか|「論語」公冶長第五07 一方で任侠に熱い子路のことを案じているように感じるのです。


「論語」参考文献|論語、素読会
述而第七09< | >述而第七11


【現代に活かす論語】
任用されれば正しく行い、退任すれば静かにして多くを語らない。身の振り方を正しくすることは大切です。

事に望むときは慎重にして、充分に計画を行って成功させる。そうありたいものだなぁ。