論語、素読会

夫子の是の邦に至るや、必ず其の政を聞く|「論語」学而第一10

【原文】
 子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政、求之与、抑与之与。子貢曰、夫子温良恭倹譲以得之。夫子之求之也、其諸異乎人之求之与。
<子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政、求之與、抑與之與。子貢曰、夫子温良恭儉譲以得之。夫子之求之也、其諸異乎人之求之與。>

(子禽、子貢に問うて曰わく、夫子の是の邦に至るや、必ず其の政を聞く、之を求めたるか、抑之を与えたるか。子貢曰わく、夫子は温良恭倹譲、以て之を得たり。夫子の之を求むるは、其れ諸れ人の之を求むるに異なるか。)
【読み下し文】
 子禽(しきん)、子貢(しこう)に問(と)うて曰(い)わく、夫子(ふうし)の是(こ)の邦(くに)に至(いた)るや、必(かなら)ず其(そ)の政(まつりごと)を聞(き)く、之(これ)を求(もと)めたるか、抑(そもそも)之(これ)を与(あた)えたるか。子貢(しこう)曰(い)わく、夫子(ふうし)は温良恭倹譲(おんりょうきょうけんじょう)、以(もっ)て之(これ)を得(え)たり。夫子(ふうし)の之(これ)を求(もと)むるは、其(それ)れ諸(こ)れ人(ひと)の之(これ)を求(もと)むるに異(こと)なるか。

『論語、素読会』
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00:00​ 章句の検討
18:50​ 「学而第一」01-16 素読
2021.2.26収録


子禽(しきん) … 姓は陳、名は亢、子禽は字。孔子より40歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会

子貢(しこう) … 姓は端木、名は賜、字は子貢。孔子より31歳若い。「論語」の中で孔子との問答がもっとも多い。言葉巧みな雄弁家で自信家だったが、孔子には聡明さを褒められ、言葉の多さを指摘されている。
経済面で能力が高かったと言われている。「論語」の登場人物|論語、素読会

【解釈】

子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政、

「夫子」とは、先生の意。「政」は政治。
子禽が子貢に尋ねました、孔先生は、どの国に行っても必ず政治について聞かれるが、

求之与、抑与之与。

「抑」は(そもそも)と読む。
これは先生から求められたものでしょうか、それともその国の君主から持ちかけられたものでしょうか。

子貢曰、夫子温良恭倹譲以得之。

「温」は穏やかさ、「良」は生まれついての素直さ、「恭」は恭順、慎み深くて礼儀正しい、「倹」は引き締まって節度がある、「譲」は謙遜し控えめなこと。温良恭倹譲は人に接する際の徳容を表す。
子貢は答えて言った、孔先生は穏やかで素直、礼儀正しくて節度があり控えめであるので、先方からの求めを受けたのだ。

夫子之求之也、其諸異乎人之求之与。

「夫子之求之也」は子禽の質問に応対して、
孔先生が政治の話を求められるのは、一般の人が求められるのと違うのではないかと思う。


【解説】

最後の子貢の言葉の解釈について熟考を重ねた結果、あえて一文追加することで理解の一助となればと思います。
孔先生が政治の話を求められるのは、一般の人が求められるのと違うのではないかと思う。諸国の君子たちは、先生の前では政治の話を自然と求めたくなるなるのだと思うよ。
このように言いたかったのではないかと思うのです。


「論語」参考文献|論語、素読会
学而第一09< | >学而第一11


【現代に活かす論語】
孔子という人物は、諸国周遊の旅の途中で立ち寄るどの国でも、必ずその国の君主から招かれ、政治の話を尋ねられていました。職を得たいがための積極的な姿というより、君主が思わず話を聞きたくなるようなそんな人柄がそうさせていたのだということです。私たちも人としての魅力を備えられるよう学びたいものです。