子貢が孔先生に尋ねた、ここに美しい玉があります。木箱に収めてしまっておきましょうか、それとも善い商人をさがして売りましょうか、と。孔先生がおっしゃった、売るとしよう、売るとしよう、私は買手を待っているのだ。|「論語」子罕第九13
【現代に活かす論語】
美しく磨き上げられた石のような才能は、大切にしまっておきましょうか、それとも価値が分かる人を通じて売り出しましょうか?売り出そう、売り出そう、私はこの才能の買手を待っているのです。
折角の才能をしまっておかずに、世の中のために役立たせましょう。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
09:30 「子罕第九」後半13 – 31 素読
2022.6.1収録
【解釈】
子貢(しこう) … 姓は端木(たんぼく)、名は賜(し)、字は子貢(しこう)。孔子より三十一歳若い。「論語」の中で孔子との問答がもっとも多い。言葉巧みな雄弁家で自信家だったが、孔子には聡明さを褒められ、言葉の多さを指摘されている。
子貢曰わく、斯に美玉有り。匵に韞めて諸を蔵せんか、善賈を求めて諸を沽らんか。子曰わく、之を沽らんかな、之を沽らんかな。我は賈を待つ者なり。|「論語」子罕第九13
子貢曰、有美玉於斯。韞匵而蔵諸、求善賈而沽諸。子曰、沽之哉、沽之哉。我待賈者也。
「美玉」(びぎょく)は美しい玉、光沢がありかつ透明に近い美しい石。「匵」(ひつ)は木製の箱。「韞」(おさめる)は包合する、おさめる。「蔵」(ぞう)は内に入れる。「賈」(こ)は商人。特に店を構えて商売する人。「善賈」(ぜんこ)は善い商人。「賈者」(こしゃ)は買い手。「沽」(うる)は代金をとって売りだす。「哉」(かな)は自らのもくろみについて周囲の人の意見や同意を求める語気を示す。
子貢が孔先生に尋ねた、ここに美しい玉があります。木箱に収めてしまっておきましょうか、それとも善い商人をさがして売りましょうか、と。孔先生がおっしゃった、売るとしよう、売るとしよう、私は買手を待っているのだ。
【解説】
孔子より三十一歳も若い子貢が、仕官の意志を確認する場面です。しかも直接的に尋ねるのではなく、孔子を美しい玉に例えてうやうやしく大切に箱にしまっておくか、美玉の価値を知る優秀な商人に売って広くその価値が高まるようにするかと、洒落の効いた問答に仕立てました。これにすぐに気付いた孔子は敢えて「我」と言って自分が所有する美玉であると回答することで、軽妙に明確に応えています。
どんな流れでこのような会話が生まれたのかは分かりませんが、少なくともこの会話の前には平穏な時間の流れとともに孔子と子貢の仲睦まじい様子が想像できるのです。
「論語」参考文献|論語、素読会
子罕第九12< | >子罕第九14
【原文・白文】
子貢曰、有美玉於斯。韞匵而蔵諸、求善賈而沽諸。子曰、沽之哉、沽之哉。我待賈者也。
<子貢曰、有美玉於斯。韞匵而藏諸、求善賈而沽諸。子曰、沽之哉、沽之哉。我待賈者也。>
(子貢曰わく、斯に美玉有り。匵に韞めて諸を藏せんか、善賈を求めて諸を沽らんか。子曰わく、之を沽らんかな、之を沽らんかな。我は賈を待つ者なり。)
【読み下し文】
子貢(しこう)曰(い)わく、斯(ここ)に美玉(びぎょく)有(あ)り。匵(ひつ)に韞(おさ)めて諸(これ)を藏(ぞう)せんか、善賈(ぜんこ)を求(もと)めて諸(これ)を沽(う)らんか。子(し)曰(のたま)わく、之(これ)を沽(う)らんかな、之(こ)を沽(う)らんかな。我(われ)は賈(こ)を待(ま)つ者(もの)なり。
「論語」参考文献|論語、素読会
子罕第九12< | >子罕第九14