(孔先生は、)寝るときは死者のように横たわらない。家に居るときは身づくろいをせずゆったり過ごした。喪服姿の人を見れば、親しい人だとしても必ず顔色を改めた。礼装用の冠を身につけた人や、目が不自由な人を見れば、いかに私的な関係であったとしても礼儀をもって接した。喪服を着る人には車の前の横木に手をついた(礼をした)。国の地図や戸籍を運ぶ人にも手をついた(礼をした)。立派なごちそうでもてなされたときは、必ず顔色を変えて立ち上がった(礼をした)。雷がすさまじく風がはげしく吹くときは、必ず顔色を変えて居住まいを正した。|「論語」郷党第十16
【現代に活かす論語】
普段から居住まいを正し、出会う人に礼儀と敬意をもって接し、自然に対して畏敬の念を忘れない。孔子はそういう人物でした。
『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討
13:15「郷党第十」前半10 – 18 素読
2022.12.7収録
【解釈】
寝ぬるに尸せず。居るに容づくらず。斉衰の者を見ては、狎れたりと雖も必ず変ず。冕者と瞽者とを見ては、褻と雖も必ず貌を以てす。凶服の者には之に式す。負版の者に式す。盛饌あれば、必ず色を変じて作つ。迅雷風烈には必ず変ず。|「論語」郷党第十16
寝不尸。居不容。見斉衰者、雖狎必変。見冕者与瞽者、雖褻必以貌。凶服者式之。式負版者。有盛饌、必変色而作。迅雷風烈必変。
「尸」(し)はあおむけに寝て使者のように手足をのばす。「容」(かたちづくる)は身づくろいをする、化粧をする。「斉衰」(しさい)は一年の喪に着る喪服、麻で作り、すそが縫いそろえてある。三年喪の「斬衰」(ざんさい)は裁ち切り。「雖」(いえども)はAではあるけれどBである。「狎」(なれる)は親しくする、近づく。「冕」(べん)は天子から大夫までの礼装用の冠。「瞽」(こ)は盲人。「褻」(せつ)はふだんの、私的な。「貌」(かたち)は礼儀、礼節のある態度。「凶服」(きょうふく)は喪服。「式」(しょく)は、車の前側にある手すりの横木。「負版」(ふはん)は版を手に持つ。「版」(はん)は国の地図、戸籍などを記した板。「盛饌」(せいせん)は立派な食べ物、ごちそう。「作」(たつ)は立ち上がる。「迅雷」(じんらい)は雷が速い。「風烈」(ふうれつ)は風がはげしく吹く。
(孔先生は、)寝るときは死者のように横たわらない。家に居るときは身づくろいをせずゆったり過ごした。喪服姿の人を見れば、親しい人だとしても必ず顔色を改めた。礼装用の冠を身につけた人や、目が不自由な人を見れば、いかに私的な関係であったとしても礼儀をもって接した。喪服を着る人には車の前の横木に手をついた(礼をした)。国の地図や戸籍を運ぶ人にも手をついた(礼をした)。立派なごちそうでもてなされたときは、必ず顔色を変えて立ち上がった(礼をした)。雷がすさまじく風がはげしく吹くときは、必ず顔色を変えて居住まいを正した。
【解説】
「見斉衰者」の前に「子」が入る白文もあります。孔子の日常を切り取って、往来で出会う人への敬意を表する様子や、思いがけずもてなしを受けた場合の所作、自然に対する畏敬についても表しています。
死者、屍のように寝ないというのは恐らく手を上げて伸ばすような状態を言っているのかも知れません。
「論語」参考文献|論語、素読会
郷党第十15< | >郷党第十17
【原文・白文】
寝不尸。居不容。見斉衰者、雖狎必変。見冕者与瞽者、雖褻必以貌。凶服者式之。式負版者。有盛饌、必変色而作。迅雷風烈必変。
<寢不尸。居不容。見齊衰者、雖狎必變。見冕者與瞽者、雖褻必以貌。凶服者式之。式負版者。有盛饌、必變色而作。迅雷風烈必變。>
※寢不尸。居不容。子見齊衰者、雖狎必變。見冕者與瞽者、雖褻必以貌。凶服者式之。式負版者。有盛饌、必變色而作。迅雷風烈必變。
(寝ぬるに尸せず。居るに容づくらず。斉衰の者を見ては、狎れたりと雖も必ず変ず。冕者と瞽者とを見ては、褻と雖も必ず貌を以てす。凶服の者には之に式す。負版の者に式す。盛饌あれば、必ず色を変じて作つ。迅雷風烈には必ず変ず。)
【読み下し文】
寝(い)ぬるに尸(し)せず。居(お)るに容(かたち)づくらず。斉衰(しさい)の者(もの)を見(み)ては、狎(な)れたりと雖(いえど)も必(かなら)ず変(へん)ず。冕者(べんしゃ)と瞽者(こしゃ)とを見(み)ては、褻(せつ)と雖(いえど)も必(かなら)ず貌(かたち)を以(もっ)てす。凶服(きょうふく)の者(もの)には之(これ)に式(しょく)す。負版(ふはん)の者(もの)に式(しょく)す。盛饌(せいせん)あれば、必(かなら)ず色(いろ)を変(へん)じて作(た)つ。迅雷風烈(じんらいふうれつ)には必(かなら)ず変(へん)ず。
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