論語、素読会

吾は其れ東周を為さんか|「論語」陽貨第十七05

公山弗擾が(自分の任地である)費において謀反を起こした。そして(孔子を)招いた。(孔)先生は行かれようとされた。子路はこれをよろこばずに言う、おもむいてはいけませんと。どうして必ずしも公山氏の元へ行かなければならないのであろうかと。孔先生がおっしゃった、そもそも私を招く者である、どうして無駄になろうかと。もし私を登用する者がいるのであれば、私は(西周に匹敵する)周を作ろうかねぇ|「論語」陽貨第十七05

【現代に活かす論語】
自分の意見を聞いてくれる人がいれば、よろこんで話をしに行こう。

【解釈】

公山弗擾(こうざんふつじょう) … 姓は公山、名は弗擾で、不擾(ふじょう)・不狃(ふちゅう)とも書く。魯(ろ)の季氏の家臣で、季氏の領地の費(ひ)の長官を務めていた。「論語」の登場人物|論語、素読会

費(ひ) … 地名。春秋時代、魯の集落。今の山東省費県にあった。季氏の領地。

子路(しろ) … 姓は仲(ちゅう)、名は由(ゆう)、字は子路(しろ)・季路(きろ)。孔子より九歳若い。孔子のボディガード役を果たした。「論語」の登場人物|論語、素読会

公山弗擾、費を以て畔く。召ぶ。子往かんと欲す。子路説ばずして曰わく、之くこと末きのみ。何ぞ必ずしも公山氏に之れ之かんや。子曰わく、夫れ我を召ぶ者にして、豈徒ならんや。如し我を用うる者あらば、吾は其れ東周を為さんか。|「論語」陽貨第十七05
公山弗擾、以費畔。召。子欲往。子路不説曰、末之也已。何必公山氏之之也。子曰、夫召我者、而豈徒哉。如有用我者、吾其為東周乎。

「畔」(そむく)は裏切る。「召」(よぶ)はよびよせる、招く。「説」(よろこぶ)は心からうれしく思う。「之」(ゆく)はおもむく。「末」(なかれ)は…してはならない。「已」(のみ)は…なのである、…だけである。「何」(なんぞ)はどうして…であろうか。「必」(かならず)はどうしても。「夫」(それ)はそもそも。「豈」(あに)はどうして…であろうか、まさか…ではあるまい。「徒」(いたずらに)はむだに、むなしく。「如」(もし)はもしも…ならば、かりに…ならば。

公山弗擾が(自分の任地である)費において謀反を起こした。そして(孔子を)招いた。(孔)先生は行かれようとされた。子路はこれをよろこばずに言う、おもむいてはいけませんと。どうして必ずしも公山氏の元へ行かなければならないのであろうかと。孔先生がおっしゃった、そもそも私を招く者である、どうして無駄になろうかと。もし私を登用する者がいるのであれば、私は(西周に匹敵する)周を作ろうかねぇ

【解説】

公山弗擾は季氏の領地の費で謀反を起こしました。季氏は魯の国の大夫として決して褒められない政事を行っていたとしても、謀反を起こした人物の招きに応じ、わざわざ登用されに出向くとなれば、子路が止めるのも理解できます。文献によれば、そもそもこのとき、孔子はすでに魯の国の要職に就いていたということで、章句の信憑性が疑われるという意見もあるようです。
ということであれば、孔子は登用を願うために会うというより、公山弗擾の行いを正すために会うという意味合いをこの章句に求めることもできると思います。
東周というのは比喩で、孔子が手本にしている先代の周(西周)に対して、魯の国を周のようにするという意味があると思います。


「論語」参考文献|論語、素読会
陽貨第十七04< | >陽貨第十七06


【原文・白文】
 公山弗擾、以費畔。召。子欲往。子路不説曰、末之也已。何必公山氏之之也。子曰、夫召我者、而豈徒哉。如有用我者、吾其為東周乎。
<公山弗擾、以費畔。召。子欲往。子路不説曰、末之也已。何必公山氏之之也。子曰、夫召我者、而豈徒哉。如有用我者、吾其爲東周乎。>

(公山弗擾、費を以て畔く。召ぶ。子往かんと欲す。子路説ばずして曰わく、之くこと末きのみ。何ぞ必ずしも公山氏に之れ之かんや。子曰わく、夫れ我を召ぶ者にして、豈徒ならんや。如し我を用うる者あらば、吾は其れ東周を為さんか。)
【読み下し文】
 公山弗擾(こうざんふつじょう)、費(ひ)を以(もっ)て畔(そむ)く。召(よ)ぶ。子(し)往(ゆ)かんと欲(ほっ)す。子路(しろ)説(よろこ)ばずして曰(い)わく、之(ゆ)くこと末(な)きのみ。何(なん)ぞ必(かなら)ずしも公山氏(こうざんし)に之(こ)れ之(ゆ)かんや。子(し)曰(のたま)わく、夫(そ)れ我(われ)を召(よ)ぶ者(もの)にして、豈(あに)徒(いたずら)ならんや。如(も)し我(われ)を用(もち)うる者(もの)あらば、吾(われ)は其(そ)れ東周(とうしゅう)を為(な)さんか。


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陽貨第十七04< | >陽貨第十七06


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