論語、素読会

孝弟なる者は、其れ仁を為すの本か|「論語」学而第一02

有先生は言った、その人柄が家庭で親孝行や兄弟思いである者が、家庭の外で目上の人に逆らうような人は少ない家庭内で親兄弟に対する礼儀を正していれば、社会に出て目上の人に立て付いたり社会を乱すことはない。人間とは基本的なことに対して努力する。そしてその努力が確立されれば道が見えてくる。家庭で礼儀作法を守ろうと務める(努力した)ことは、「仁」に通じる根本ではないか。|「論語」学而第一02

【現代に活かす論語】
家庭内での親兄弟に対する礼儀を正していれば、社会を乱すようなことはない。人がものごとの原理原則を理解して努力すれば道が開けてくる。家庭での礼儀作法がリーダーとしての資質である「人を思いやる心」を育てる根本になるのではないか。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00​ 章句の検討
10:25​ 「学而第一」01-16 素読
2021.2.16収録

【解釈】

有子(ゆうし) … 姓は有、名は若、字は子有。孔子より十三歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会

有先生は言った、その人柄が家庭で親孝行や兄弟思いである者が、家庭の外で目上の人に逆らうような人は少ない。家庭内で親兄弟に対する礼儀を正していれば、社会に出て目上の人に立て付いたり社会を乱すことはない。人間とは基本的なことに対して努力する。そしてその努力が確立されれば道が見えてくる。家庭で礼儀作法を守ろうと務める(努力した)ことは、「仁」に通じる根本ではないか。|「論語」学而第一02
有子曰、其為人也、孝弟而好犯上者鮮矣。不好犯上而好作乱者、未之有也。君子務本、本立而道生、孝弟也者、其為仁之本与。

孝弟の「孝」とは親に対する孝行、「弟」とは兄思い姉思いという気持ち(従順)を指している。『孝弟』とは?|論語、素読会 「上」とは広義の目上の人の意味。「犯」(おかす)はつっかかる、逆らうの意。「好」は自分の心にそうしようと思うこと。「不好犯上」は前文を受け継いで否定している。「乱」(らん)は道理に逆らって争うこと。「作」(なす)は起こすこと。つまり「好作」は世の中を乱すことを好むの意。「君子」とは、人間が生まれながらに目指す者。「本」(もと)は根本。「務」(つとむ)は勤める、努力する。「立」(たつ)は確立するの意。「仁」とは、論語の中で大切にされている「仁・義・礼・智・信」などの中で最も重要とされる思想。人を敬う気持ち、慮(おもんぱか)る気持ち。『仁』とは?|論語、素読会

有先生は言った、その人柄が家庭で親孝行や兄弟思いである者が、家庭の外で目上の人に逆らうような人は少ない。家庭内で親兄弟に対する礼儀を正していれば、社会に出て目上の人に立て付いたり社会を乱すことはない。人間とは基本的なことに対して努力する。そしてその努力が確立されれば道が見えてくる。家庭で礼儀作法を守ろうと務める(努力した)ことは、「仁」に通じる根本ではないか。

【解説①】

有子が他の弟子たちに話していると考えられる。

論語の第一句、小論語に続いて、弟子の有子の言葉が続いていることが興味深い。学びの基本に理念を提示した後で、弟子の言葉を借りて孔子が常々説いていた、家庭内の礼儀作法が大事、家庭での生活がすべての基礎・基本であるという教えを、学ぼうとする若い人に伝えようとしていると思います。

【解釈②】

余談ですが、渋沢栄一翁を描いた「青天を衝け」の初回で、幼い栄一が父に「上」とは?と尋ね、父親は「上」とは目上の人のことだと答えるシーンがありました。このようなやり取りが羨ましく映りました。
ちなみに我が家でもごく希にですが、同じようなやり取りを行うことがあります。それもこれも論語の素読を続けているおかげだと思っています。


「論語」参考文献|論語、素読会
学而第一01 < | > 学而第一03


【原文・白文】
 有子曰、其為人也孝弟、而好犯上者鮮矣。不好犯上而好作乱者、未之有也。君子務本、本立而道生、孝弟也者、其為仁之本与。
<有子曰、其爲人也孝弟、而好犯上者鮮矣。不好犯上而好作亂者、未之有也。君子務本、本立而道生、孝弟也者、其爲仁之本與。>

(有子曰わく、其の人と為りや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮なし。上を犯すことを好まずして乱を作すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。君子は本を務む、本立ちて道生ず。孝弟なる者は、其れ仁を為すの本か。)
※読み下し文を複数掲載する理由|論語、素読会
【読み下し文①】
 有子(ゆうし)曰(い)わく、其(そ)の人(ひと)と為(な)りや孝弟(こうてい)にして、上(かみ)を犯(おか)すを好(この)む者(もの)は鮮(すく)なし。上(かみ)を犯(おか)すことを好(この)まずして乱(らん)を作(な)すを好(この)む者(もの)は、未(いま)だ之(こ)れ有(あ)らざるなり。君子(くんし)は本(もと)を務(つと)む、本(もと)立(た)ちて道(みち)生(しょう)ず。孝弟(こうてい)なる者(もの)は、其(そ)れ仁(じん)を為すの本(もと)か。[仮名論語
【読み下し文②】
 有子(ゆうし)曰(い)わく、其(そ)の人(ひと)と為(な)りや孝弟(こうてい)にして、上(かみ)を犯(おか)すことを好(この)む者(もの)は鮮(すく)なし。上(かみ)を犯(おか)すことを好(この)まずして乱(らん)を作(な)すことを好(この)む者(もの)は、未(いま)だ之(こ)れ有(あ)らざるなり。君子(くんし)は本(もと)を務(つと)む、本(もと)立(た)ちて道(みち)生(しょう)ず。孝弟(こうてい)なる者(もの)は、其(そ)れ仁(じん)の本(もと)たるかと。[新釈漢文大系 論語論語と孔子の事典



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学而第一01 < | > 学而第一03