論語、素読会

政に従うに於て何か有らん|「論語」雍也第六06

【原文】
 季康子問、仲由可使従政也与。子曰、由也果。於従政乎何有。曰、賜也可使従政也与。曰、賜也達。於従政乎何有。曰、求也可使従政也与。曰、求也芸。於従政乎何有。
<季康子問、仲由可使從政也與。子曰、由也果。於從政乎何有。曰、賜也可使從政也與。曰、賜也達。於從政乎何有。曰、求也可使從政也與。曰、求也藝。於從政乎何有。>

(季康子問う、仲由が政に従わしむべきか。子曰わく、由や果なり。政に従うに於て何か有らん。曰わく、賜は政に従わしむべきか。曰わく、賜や達なり。政に従うに於て何か有らん。曰わく、求は政に従わしむべきか。曰わく、求や芸あり。政に従うに於て何か有らん。)
【読み下し文】
 季康子(きこうし)問(と)う、仲由(ちゅうゆう)が政(まつりごと)に従(したが)わしむべきか。子(し)曰(のたま)わく、由(ゆう)や果(か)なり。政(まつりごと)に従(したが)うに於(おい)て何(なに)か有(あ)らん。曰(い)わく、賜(し)は政(まつりごと)に従(したが)わしむべきか。曰(い)わく、賜(し)や達(たつ)なり。政(まつりごと)に従(したが)うに於(おい)て何(なに)か有(あ)らん。曰(い)わく、求(きゅう)は政(まつりごと)に従(したが)わしむべきか。曰(のたま)わく、求(きゅう)や芸(げい)あり。政(まつりごと)に従(したが)うに於(おえ)て何(なに)か有(あ)らん。


季康子(きこうし) … 魯の大夫。季氏(季孫氏)の七代目。名は肥、贈り名は康。孔子の門人、冉求、子貢、子路、樊遅らを任用し、冉求の求めで孔子を招いたりもした。

仲由(ちゅうゆう) … 姓は仲(ちゅう)、名は由、字は子路・季路。孔子より9歳若く孔子門人の中で最年長。孔子のボディガード役を果たした。

賜(し) … 子貢(しこう)。姓は端木(たんぼく)、名は賜(し)、字は子貢(しこう)。孔子より31歳若い。「論語」の中で孔子との問答がもっとも多い。言葉巧みな雄弁家で自信家だったが、孔子には聡明さを褒められ、言葉の多さを指摘されている。

求(きゅう) … 冉有(ぜんゆう)。姓は冉(ぜん)、名は求(きゅう)また有(ゆう)。字は子有(しゆう)。孔子より29歳若い。温和な性格だったようです。

【解釈】

季康子問、仲由可使従政也与。子曰、由也果。於従政乎何有。

「従政」(まつりごとにしたがう)は、大夫として政治を担当する。「使」(しむ)はさせる。「可」(べき)はできる、可能。「果」(か)は果断、決断力がある。
季康子が孔子に問うた、仲由は政治を担当させられるでしょうか? 孔先生がおっしゃった、彼は決断力があります。政治を担当させることにおいて何か(問題が)ありましょうか。問題ありません。

曰、賜也可使従政也与。曰、賜也達。於従政乎何有。

「達」(たつ)は物事において造詣が深い、よく知っている。
季康子が続けて孔子に問うた、賜は政治を担当させられるでしょうか? 孔先生がおっしゃった、彼は物事をよく知っています。政治を担当させることにおいて問題ありません。

曰、求也可使従政也与。曰、求也芸。於従政乎何有。

「芸」(げい)は才能多し。
季康子が孔子に問うた、求は政治を担当させられるでしょうか? 孔先生がおっしゃった、彼は多才な人物です。政治を担当させることにおいて問題ありません。


【解説】

孔子を重用した季桓子の跡を継いで大夫となった季康子が孔子の弟子について尋ねています。いずれも孔子の門人の中で秀でた人物で、それぞれの特長を明確にした上で、政治を担当させることに何ら問題がないと言っています。個々人の能力を以てすれば政治を担当できるという、孔子の門人たちに対する強烈な自信を感じます。

季康子は孔子の弟子を召し抱えようと、彼らについての人物評を孔子に尋ねていると思われます。季康子の下で政治の運営を担うことについて、いずれの弟子についてもその長所を挙げて、まったく問題ないと評価しています。翻れば彼らを生かすも殺すも季康子次第ということを、暗に伝えているとも受け取れます。

古代中国では、名で呼ぶのはよほど親しい関係であるということなので、季康子が孔子の弟子たちの名を知っていて会話の中で名で呼んでいるというのが驚きです。しかも孔子が季康子との会話の中で彼らのことを名で呼んでいることは、孔子と季康子、門人たちの関係の深さを物語っているのではないでしょうか。例えば年に一度二度会って話をする程度では構築し得ない関係性を感じます。
季康子と同じ魯の国の大夫、孟武伯が尋ねたとき(其の仁を知らざるなり|「論語」公冶長第五08)も同様だったので、孔子は魯の国の大夫たちを批判しながらも、近しい間柄にあったということではないでしょうか。


「論語」参考文献|論語、素読会
雍也第六05< | >雍也第六07


【現代に活かす論語】
一芸に秀でたもの、優れた能力の持ち主たち。彼らを生かすも殺すも彼らを部下に持つリーダー次第なのである。