論語、素読会

礼の用は和を貴しと為す|「論語」学而第一12

有先生が言った、「礼」において「和」調和を大切にするというのは、古の立派な王の行ってきた道もこの調和により美しかったのだ。だが、大小さまざまなことを「和」に頼ってしまうと、うまくいかないこともある。調和としての「和」を知って、調和を大事にして行うにしても、秩序としての「礼」を以て、節度をわきまえないとうまくいかないのである。|「論語」学而第一12

【現代に活かす論語】
組織における制度、規範などの運用において人間関係は大事だが、組織の人間関係だけを重視するのではなく、礼節や節度をわきまえた上でバランスを取らないとうまくいかないのである。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00​ 章句の検討

14:10​ 「学而第一」01-16 素読
2021.3.2収録

【解釈】

有子 … 姓は有、名は若、字は子有。孔子より十三歳若い。「論語」の登場人物|論語、素読会

有子曰わく、礼の用は和を貴しと為す、先王の道は斯を美と為す。小大之に由れば、行われざる所有り。和を知りて和するも、礼を以て之を節せざれば、亦行うべからざるなり。|「論語」学而第一12
有子曰、礼之用和為貴、先王之道斯為美。小大由之、有所不行。知和而和、不以礼節之、亦不可行也。

「礼」というのは、仁・義・礼・智・信はのちの儒教の中で五常として徳性を表すもの。礼節や葬祭の慣習などを敬う気持ちを指すだけではなく、広く秩序や規範なども含める。『礼』とは?|論語、素読会 「和」とは和らぎ、調和といった意味。
この章句では国の政治の運用におけるさまざまな祭礼を意味すると考えるべきだと思います。「先王」とは、孔子の時代の更に前の王のこと。夏・殷・周の時代はのちの戦乱の世の中に対して、立派な王が治めた見習うべき時代という意識があった。「道」は人が生まれながらにして徳性を重ねながら進む道と解釈したい。『道』とは?|論語、素読会 「小大」とは、小事大事のこと。

有先生が言った、「礼」において「和」調和を大切にするというのは、古の立派な王の行ってきた道もこの調和により美しかったのだ。だが、大小さまざまなことを「和」に頼ってしまうと、うまくいかないこともある。調和としての「和」を知って、調和を大事にして行うにしても、秩序としての「礼」を以て、節度をわきまえないとうまくいかないのである。

【解説】

現代社会においても組織や集まりにおいて、周りの人間関係を重視するあまり第三者から見ると本筋から逸脱することがあります。先人の経験によって培われ言い伝えられてきた礼節や節度を大切にすることで、バランスが取れるという事だと思います。こちらの章句と併せて親しみたいです。「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず|「論語」子路第十三23

この章句は、「17条の憲法」の第一条の出典と言われています。

夏四月丙寅朔戊辰、皇太子親肇作憲法十七條。
一曰、以和爲貴、無忤爲宗。人皆有黨。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。
夏四月丙寅朔の戊辰の日に、皇太子、親ら肇めて憲法十七條(いつくしきのりとをあまりななをち)を作る。
一に曰く、和(やわらぎ)を以て貴しと為し、忤(さか)ふること無きを宗とせよ。人皆党(たむら)有り、また達(さと)れる者は少なし。或いは君父(くんぷ)に順(したがわ)ず、乍(また)隣里(りんり)に違う。然れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理おのずから通ず。何事か成らざらん。

Wikipedia



「論語」参考文献|論語、素読会
学而第一11< | >学而第一13


【原文・白文】
 有子曰、礼之用和為貴、先王之道斯為美。小大由之、有所不行。知和而和、不以礼節之、亦不可行也。
<有子曰、禮之用和爲貴、先王之道斯爲美。小大由之、有所不行。知和而和、不以禮節之、亦不可行也。>

(有子曰わく、礼の用は和を貴しと為す、先王の道は斯を美と為す。小大之に由れば、行われざる所有り。和を知りて和するも、礼を以て之を節せざれば、亦行うべからざるなり。)
※読み下し文を複数掲載する理由|論語、素読会
【読み下し文①】
 有子(ゆうし)曰(い)わく、礼(れい)の和(わ)を用(もっ)て貴(たっと)しと為(な)すは、先王(せんのう)の道(みち)も斯(これ)を美(び)と為(な)す。小大(しょうだい)之(これ)に由(よ)れば、行(おこな)われざる所(ところ)有(あ)り。和(わ)を知(し)りて和(わ)すれども、礼(れい)を以(もっ)て之(これ)を節(せっ)せざれば、亦(また)行(おこな)うべからざるなり。[仮名論語
【読み下し文②】
 有子(ゆうし)曰(い)わく、礼(れい)の用(よう)は和(わ)を貴(たっと)しと為(な)す。先王(せんのう)の道(みち)は斯(これ)を美(び)と為(な)すも、小大(しょうだい)之(これ)に由(よ)れば、行(おこな)われざる所(ところ)有(あ)り。和(わ)を知(し)りて和(わ)するも、礼(れい)を以(もっ)て之(これ)を節(せっ)せざれば、亦(また)行(おこな)うべからざるなりと。[新釈漢文大系 論語論語と孔子の事典


「論語」参考文献|論語、素読会
学而第一11< | >学而第一13