論語、素読会

己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ|「論語」顔淵第十二02

仲弓が「仁」について尋ねた。孔先生がおっしゃった、家を出ては非常に大切なお客さんに会うように接し、人民を使うときには大事なお祭りを補佐して行うようにする。自分が嫌だと思うことはひとに行ってはいけない。(そうすれば)国において怨まれることはなく、家において怨まれることも無いと。仲弓は言う、私(雍)は賢くはないですが、どうかこのことばを(生涯の)つとめとすることをお許しください。|「論語」顔淵第十二02

【現代に活かす論語】
外で人と接するときは常に大切なお客様に会うように接し、部下を使うときは常に大事な祭事を補佐するかのようにサポートする。そして自分が嫌だと思うことをひとに行ってはいけない。

『論語、素読会』YouTube動画
00:00 章句の検討

14:30「顔淵第十二」前半01 – 13 素読
2023.04.28収録

【解釈】

仲弓(ちゅうきゅう)雍(よう) … 姓は冉(ぜん)、名は雍(よう)、字は仲弓(ちゅうきゅう)。孔子より二十九歳若い門人。「論語」の登場人物|論語、素読会

仲弓仁を問う。子曰わく、門を出でては大賓を見るが如くし、民を使うには大祭に承えまつるが如くす。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ。邦に在りても怨無く、家に在りても怨無し。仲弓曰わく、雍不敏なりと雖も、請う斯の語を事とせん。|「論語」顔淵第十二02
仲弓問仁。子曰、出門如見大賓、使民如承大祭。己所不欲、勿施於人。在邦無怨、在家無怨。仲弓曰、雍雖不敏、請事斯語矣。

「賓」(ひん)は重要な客人。「承」(つかえる)は補佐する。「施」(ほどこす)は実行する、おこなう。「勿」(ない)はしない。「邦」(くに)は元来「国」は一定の地域の意、せいぜい派生しても都城までの意で、国家の意は「邦」が表していた。「怨」(うらみ)は憎む、仇として怒る。「敏」(びん)は頭の回転がはやくかしこい。「雖」(いえども)はではあるけれど。「語」(ご)は話、ことば。「事」(こと)は職務、任務、職業、つとめ。「請」(こう)はどうか…するのをお許しください。

仲弓が「仁」について尋ねた。孔先生がおっしゃった、家を出ては非常に大切なお客さんに会うように接し、人民を使うときには大事なお祭りを補佐して行うようにする。自分が嫌だと思うことはひとに行ってはいけない。(そうすれば)国において怨まれることはなく、家において怨まれることも無いと。仲弓は言う、私(雍)は賢くはないですが、どうかこのことばを(生涯の)つとめとすることをお許しください。

【解説】

魯の国の大夫(国の政治を行うトップ)、季氏に仕えた仲弓に「仁」について語った章句です。すでに任官していたのかどうかは分かりませんが、任用された際の心づもりを説いています。当時、季氏をはじめとする三桓とよばれる大夫たちが行う不正が民を苦しめていたようです。孔子は徳政を目指して弟子たちを育てていました。その孔子と弟子たちが一番大事にしていたのが「仁」であり、任官される(希望する)仲弓にとっての「仁」を説いたところに孔子の工夫があります。顔淵第十二ではこの章句のほかに顔淵、司馬牛、燓遅が「仁」について尋ねています。『仁』とは?|論語、素読会
この章句で孔子が伝えていることは、政治に携わるかどうかに関わらず、人の上に立つ立派な人(君子)を目指すひとであれば意識すべき内容だと思います。
句末の「私(雍)は賢くはないですが、どうかこのことばを(生涯の)つとめとすることをお許しください。」としたところは、「私はまだまだ至りませんが、いただいたお言葉を生涯をかけて実行していきたいと思います」と置き換えられます。


「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二01< | >顔淵第十二03


【原文・白文】
 仲弓問仁。子曰、出門如見大賓、使民如承大祭。己所不欲、勿施於人。在邦無怨、在家無怨。仲弓曰、雍雖不敏、請事斯語矣。

(仲弓仁を問う。子曰わく、門を出でては大賓を見るが如くし、民を使うには大祭に承えまつるが如くす。己の欲せざる所は、人に施すこと勿れ。邦に在りても怨無く、家に在りても怨無し。仲弓曰わく、雍不敏なりと雖も、請う斯の語を事とせん。)
【読み下し文】
 仲弓(ちゅうきゅう)仁(じん)を問(と)う。子(し)曰(のたま)わく、門(もん)を出(い)でては大賓(たいひん)を見(み)るが如(ごと)くし、民(たみ)を使(つか)うには大祭(たいさい)に承(つか)えまつるが如(ごと)くす。己(おのれ)の欲(ほっ)せざる所(ところ)は、人(ひと)に施(ほどこ)すこと勿(なか)れ。邦(くに)に在(あ)りても怨(うらみ)無(な)く、家(いえ)に在(あ)りても怨(うらみ)無(な)し。仲弓(ちゅうきゅう)曰(い)わく、雍(よう)不敏(ふびん)なりと雖(いえど)も、請(こ)う斯(こ)の語(ご)を事(こと)とせん。


「論語」参考文献|論語、素読会
顔淵第十二01< | >顔淵第十二03


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